2025年2月、ニューヨークで熊本の陶磁器の展示会が開催されました。

来場者「素晴らしい」 来場者「とても驚いたよ」

ニューヨーカーが驚きの声を上げるもの、それがこの「豆腐」

実はこれ「天草陶石」で作ったアート作品なのです。

来場者「ポン酢を垂らしたら美味しそう」 来場者「指で押し込めそうなくらい柔らかく見えます。でもとても硬いです。とても素晴らしいです」

制作したのは、陶芸家の髙木健多(たかきけんた)さん、38歳。
天草陶石の魅力を世界へ伝えるため、ニューヨークで個展を開催しました。

陶芸家 髙木健多さん(38)「関心を持って見てくれる人が多いというのが印象です。豆腐に関してはみんなが知っているのは驚きです」

普段は、熊本県合志市にある工房で天草陶石を使った作品作りに取り組んでいます。

陶芸家 髙木健多さん(38)「『豆腐に鎹(かすがい)』ということわざ通り、豆腐に鎹を打って、割れた豆腐をつなぎ止めている。鉄は劣化していくのですが、焼き物は半永久的にかたちが変わらないので、そこの時間のコントラストが面白いのかなと。美しいものを作りたい。用途があろうがなかろうが」

天草陶石は、世界一の陶石と言われる質の高さで、有田焼や波佐見焼に使われています。

21歳の頃、陶芸に興味を持った髙木さんは、 友人と天草陶石の工房を見学にいった際、その美しさに魅了されました。

陶芸家 髙木健多さん(38)「この滑らかな手触りと、その手触りに相応しい白。天草陶石の美しさを感じた」

その天草陶石の白を活かした作品の一つが「豆腐」でした。
陶芸家 髙木健多さん(38)「本物と見間違える人が大半で、触ったら硬いので、そこにびっくりしているという、見た人の反響があった。天草陶石を知ってもらうというのが第一だと思う。きっかけに、入り口になればいい」

髙木さんの作品は、展示会でも高い評価を受けています。特にこだわりは、素材の美しさを活かすこと。お皿やコップの制作でも、絵付けはしません。

陶芸家 髙木健多さん(38)「これは『かみさら』という、紙がひらっと浮いたような器なんですけど、土が柔らかく波を打っている状態をそのまま焼き上げた。ちょっと薄く残っている波紋みたいなのも、工業製品だと違うかたちになってしまうので消すが、あえて僕は残したい」

来場者「今まで見た器の中でも白が美しい。質感も色もとても興味深い」 来場者「皿もカップもとても繊細で、とても感触が滑らかで気に入りました」
陶芸家 髙木健多さん(38)「天草陶石は脇役的なところがあったと思う。有田焼とかは名前が世界に出ているが、下地に使われている天草陶石は着目されにくかった」
また、天草陶石の、ある課題にも取り組んでいます。
陶芸家 髙木健多さん(38)「白い器を作るなら、白い陶石を選んで作るという歴史があるが、今は質の良い陶石が採れにくくなってきたという話は聞きます」

白いものほど等級が高い天草陶石、その採掘量は減少。鉄分など不純物を含む等級の低い石は、焼き上げた時に真っ白な器にならず、粘土が固まりにくい。そのため、あまり使われず採掘場で余っているのが現状です。

陶芸家 髙木健多さん(38)「需要がないランクの低い石を有効的活用・開拓していきたい」

熊本市西区にある光洋電気工業は、天草陶石を使用して電柱に取り付ける絶縁体 「碍子」の製造を行う会社です。こちらで今、天草陶石の陶芸用粘土を共同開発しています。

陶芸家 髙木健多さん(38)「白さだけでなく、鉄分とかもある状態の石にも興味がある」

等級の低い石だからこそできる白の表現ができないかと、新たな可能性を探っています。

陶芸家 髙木健多さん(38)「特別な魅力として表現できれば面白い」
天草陶石の魅力を世界へ。現在、髙木さんの作品は、ニューヨークのアート市場に並び、8月にはロサンゼルスで展示会も開催予定です。
陶芸家 髙木健多さん(38)「天草陶石の美しさを僕なりに追求しつつ、いろんな人に知ってもらうことが目標です」

若き陶芸家の挑戦が始まっています。