◆子供たちを歓迎する笹が軒々に

家の門前に、色紙で飾り付けられた七夕のような笹が飾られています。この笹が、お菓子のサインなんです。

お菓子の在処を示す笹


父親:ほら、向こうにも笹があるけんねー。
子供:次、こっち!
神戸:笹があるお宅には入っていいんですか?
父親:そうです、笹がある家には「祝うたー」と言って入っていって、お菓子をもらう。大人たちは振る舞いがあったり、お酒飲んだりとか。海で砂を取ってきて、若衆たちは各家に配って回る。子供たちはお菓子ばっかりですが。

神輿の若衆:わっしょい、わっしょい、……祝う-たー!
神戸:こうやって家々を回るんですか。
迎える男性:自分の町内を一軒一軒回ります。
神戸:お正月の恒例行事なんですね。
迎える男性:恒例行事です。4年ぶり。コロナが明けて、久しぶりです。
神戸:毎年お祭りをする時は、お菓子と、男衆用のあてを用意するのですか?
迎える男性:そうです。子供さんがお菓子で。うち、店をしているから、いろいろいっぱい。お寿司を取ったりとか。
御神酒を注がれる神戸:じゃあ、縁起物ということでいただきます。おめでとうございます。あ、沁みる!

もてなしを用意した家

男衆はこんな感じで、無礼講のお祭りをしながら、神輿を担いで。お酒を浴びたり、浴びせかけられたり。だんだんヘロヘロになってきていましたけど。

◆増えている子供たち

子供たちは本当に元気で、もう走り回って笹の家を見つけると、飛び込んでいました。一軒家が多いからこそ、こういうお祭りが残っているのかなと思います。もらったお菓子は袋に入れて山車に載せ、歌を歌って曳きます。「子供も減ってきてさぞ大変だろう」と思ったら、今津地域は子供が増えてきているというのです。ぐるっと回って、ゴールに近づきます。

子供たち:「……的矢の矢!」
男性:お疲れさんでしたー!
女性:最後まで引っ張ってー!
神戸:けっこう歩きますもんね。
男性:距離がありますよ。7キロくらい。
神戸:でも途中からだいぶ飲みすぎて、ペースが変わっていましたね。
大人:今年、寒かったですよ。

女性:はい、みんな朝からお疲れさまでした。たくさんお菓子をもらって。大切に食べてください。みんなで元気にごあいさつしてください。
子供:ありがとうございました-!
大人:来年も頑張りますか?
子供:はーい!

神戸:きょうはどうやった?
子供:楽しかった。
神戸:すごい量だね、このお菓子。あ、(お父さんに)1個取られた。
子供:いいよ、食べていいよ。
神戸:これだけあればね。1個くらいあげるよね。これどうするの? 食べられないよ。
子供:食べる。
神戸:食べる?! 全部? 持つのにやっとな量なのに?

楽しかったですよ。昔から残っている伝統的なこと、私は大好きなんです。子供たちが歌いながら歩いているし、走り回っているし。少子化と言われて子供の顔が見えなくなってきている地域が増えていますが、こういうことが残っている地域は「いいなー」といつも思います。唄がすっかり耳に残りました。

「奉載だに出る子 矢櫓に矢射かけて 的矢の矢」

いろいろないいお祭りがあったら、私は覗きに行きたいのでご連絡ください。今津のみなさん、ありがとうございました。

◆神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。報道部長、ドキュメンタリーエグゼクティブプロデューサーなどを経て現職。近著に、ラジオ『SCRATCH差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』の制作過程を詳述した『ドキュメンタリーの現在九州で足もとを掘る』(共著、石風社)がある。ドキュメンタリーの最新作は、80分の長編『リリアンの揺りかご』(2023年12月放送)。