◆水中考古学への関心は高まるが

今年8月に、松浦市の鷹島で開かれた水中考古学の講座には全国各地から学生が集まるなど、関心は高まっています。ただ、歴史的な発見の先に必要とされる保存や活用の方法については危機感を強めています。
国学院大学 池田栄史教授
「学問的な調査研究のレベルの課題から次第にこれを保存活用していくという行政としての文化財の取り扱いの問題へと今移行しつつあります」
◆引き揚げたあと保存する場所がない

遺物を保存する技術の研究は進んでいます。水槽に浸けられているのは元寇の船の碇です。去年10月に引き揚げられたもので、約1年半におよぶ塩分を取り除く処理がこの夏終わり、糖類の一種トレハロースをしみこませて木材を補強する作業が進んでいます。トレハロースを使うことで、従来の方法よりも時間を短縮できるうえに、湿度や温度を管理しやすくなります。将来の元寇船の引き揚げも見据えた作業ですが、肝心の問題が解決されていません。

松浦市文化財課 安木由美さん
「海にあるものを引き揚げようとすると、処理の装置もないですし、揚げた後どこに保管するのかという問題もあります」
現在の施設は市町村合併前の旧鷹島町が建設したものです。すでにこれまで引き揚げた遺物だけで手狭になっていて、これより大きな船そのものを引き揚げても処理や展示する施設がありません。
松浦市文化財課 安木由美さん
「次に大きいものを引き揚げたら、別の施設とかを作らないと最終的にはできないんじゃないかな」
◆先を行く韓国の文化財保護行政

水中から見つかった遺物をどう保存していくのか。池田教授が11年前に視察した韓国では、南西部の木浦に沈没船の発見をきっかけとして博物館が建設されました。
さらに、韓国・中部の泰安には池田教授が視察した後の2018年、水中遺跡に関する2つ目の博物館も開設され引き揚げられた船などが展示されています。
◆「海の遺産」後世に残して

トップダウンで進む韓国とは違い、自治体から積み上げていくボトムアップの形を取る日本。これまでの2隻の「元寇の船」は池田教授が獲得した科学研究費を用いた調査で発見されたもので、調査の継続性と体制が問題となっています。
国学院大学 池田栄史教授
「こうした日本で初めての海底遺跡としての国指定史跡ですから、国の文化庁でどのように保護活用していくのかという方針をしっかり定めてその方向で動いていただきたい」
周りを海に囲まれ海洋国家を標榜する日本ですが、海の遺産に対する取り組みは寂しい状況にあると言わざるを得ません。歴史的な発見の成果をどう生かし後世に残していくのか、大きな課題が突き付けられています。







