肥料の価格高騰が続く中、安価で安定的に生産される肥料として広がりをみせています。下水処理場で回収される「リン」を有効活用し、福岡市とJAが協力して開発した肥料「eグリーン」の導入に向け、全国各地から視察が相次いでいます。
◆輸入価格2年前から上昇し高騰
福岡県久留米市の農家、荒巻耕太さん。ホウレンソウを中心に野菜や米を作っています。
JAみい青果ほうれん草部会 荒巻耕太部会長「大打撃ですね」
荒巻さんが「大打撃」と話すのは、農業に欠かせない肥料の高騰です。植物の成長に必要な「窒素」、「リン酸」、「カリウム」の3要素の原料は、ほとんどを輸入に頼っています。財務省の貿易統計によると、主要な肥料原料の輸入価格はいずれも2年前から上昇し、2倍以上の高騰が続いています。
JA筑前あさくら営農部 山崎一仁部長「これの半額以下でした、2000円台で売っていましたので。中国の輸出規制の関係もあります。いま中国からのモノがほぼ入ってきていない状況ですので」
◆注目の肥料「eグリーン」
そうした中、注目を集めているのが福岡市とJA全農ふくれんが協力して開発した肥料「eグリーン」です。去年9月から福岡県内で販売されています。
「eグリーン」には、博多湾の水質保全のために下水から取り除いた「リン」や、県内でとれる堆肥を配合しています。地元でとれるものを使用しているため、価格を2割から3割ほど抑えることができます。荒巻さんも半年前から、この「eグリーン」を使っています。
JAみい青果ほうれん草部会 荒巻耕太部会長「作業性も今までと変わらないですね。コストだけが下がっているという感じですね。ホウレンソウにしろ何にしろ、タネ代が一回浮く感じなんですよ。ホウレンソウだったら4000円、5000円なんでですね。1回分は浮きますね」
「eグリーン」を使って育てたホウレンソウは順調に生育し、特に収穫量や味に問題はなかったといいます。
JAみい青果ほうれん草部会 荒巻耕太部会長「やわくて、おいしいですね。真緑で、本当に見てもおいしく見える感じで、全然味にも支障ありません。自分たちは肥やしとか肥料でコストダウンをして、皆さんに安定して安く食べてもらえれば良いと思っているんですけど」
◆再生リンの回収装置を見学
下水から「リン」を取り除いている福岡市の和白水処理センターです。
RKB小畠健太「新しい肥料に関心を持つ県内の農業関係者が、再生リンの回収装置の見学に訪れています」
JA筑前あさくら野菜課 倉光久治課長「農家は下水からとれることを心配される方が一部、当初はいたので、きょう見てから全然汚水というイメージはなくなったという部分はあります。見に来て良かった」
和白水処理センター 佐々木友幸所長「コロナ禍の中にあっても400名程度ですね、2倍程度の施設見学者数となっております。だいたい倍くらいでしょうか。国土交通省とか農林水産省などの国の機関ですね、それから各自治体さんからも来て頂いていますし、北は北海道、南は鹿児島の離島のJA関係者の方も、この施設を見に来られております」
◆土壌分析で肥料の使用量削減
JA筑前あさくら営農部 山崎一仁部長「しっかり土壌分析をしていただいて、その結果を基にリン酸、カリを抑えた肥料を積極的に使ってもらう、それが農家の生産コスト低減につながると思っています」
JAでは、作付け前に土壌分析を行うことを推奨しています。土壌の状態を調べることで、補うべき成分に絞って肥料を投入できるため、肥料の使用量削減につながります。
JAみい経済部 樋口光秋部長「必要以上に肥料を入れる必要はないし、少なかったらそれだけ生育が遅れてしまうんですよね。だから適量というのが当然植物に対して求められるので、その適量をいつ、どれだけやるかを判断するのには大切な資料だと思います」
不安定な国際情勢や円安の影響で肥料原料の価格が高止まりする中、地元原産の肥料を適切に使用していく取り組みは、農家を支えるだけでなく循環型社会の形成にもつながっていきそうです。







