◆就職ではなくいばらの起業の道へ

2021年10月、大学3年だった林さんは、母の聡美さんが所有するアパートの一室を改装して店をオープンします。

来店客「長崎から記事を見てきました。大学生がぬか漬けを作られたということで寄ってみようかなと」

客層は世代を問わず幅広く、県外から足を運ぶ人もいます。しかし、ぬか漬けで利益を得ることは容易ではありません。林さんは経営の難しさを感じています。

母・聡美さん「起業は賛成でした。就職がいいと思っていましたが、あえていばらの道を行くのも素敵だなと」
父・勉さん「5年先とか10年先のビジョンに関しては伸びしろばかり」

「うまかもん市」前日が卒業式と重なり、袴姿で荷物を運び込む林さん。商品を並べ終えると急いで大学へ向かいます。

林さん「ビジネスはただ売るだけだったら簡単なんですけど、食品衛生だったりいろいろしないといけないことがあるし、売ることが怖いというか、責任を持たないといけないので難しい」

ゼミの清宮徹教授「グイグイやっていくのかなと思ったらそうではなくて人を思いやるタイプですね。気配りの人間関係でネットワークも広がっていくと思います。ぬか漬けをキープしてもらいながら夢の実現に向けて頑張ってもらいたい」

◆夢は“福岡土産”の代表格に成長すること

そして迎えた「うまかもん市」初日。福岡の名産が集まる中、「おと家」のブースにも行列ができていました。

買い物客「以前食べたことがあって、絶対に買うって決めていました」
岩田屋三越・石松瑞樹マーチャンダイザー「博多駅でイベントをやっていたときに初めて知りました。過去と現在、未来をつなげるテーマにおと家さんと私のイメージが合いました」

林さん「試食してからではなく見ずに買われたらやった!と思います。これ目当てで来てくださったと。きのうまでは学生感が抜けなかったんですよ。だけど卒業の次の日からこんなに大きな催事に出させてもらって、気が引き締まりました。夢は福岡で一番のぬか漬け屋さんになることです。福岡といえばここのお土産だよねと。空港と博多駅と百貨店さんに置きたいです」

開店直後にレジが思うように動かないトラブルがあったものの、自慢のぬか漬けは次々と売れていきました。コロナ禍をチャンスに変えた若き社長は、これからも多くの人にぬか漬けを届けていきます。