翻弄される「身内」の中国人経営者たち
ただ、私には習近平指導部は一つの視点が欠けているように思えます。中国からのクルーズ船が博多港にやって来ないこと、中国からの飛行機が飛んで来ないことで、ダメージを受けているのは、観光関連に従事する日本人だけではありません。上陸した同胞を相手にビジネス展開する中国人経営者が実は大きなダメージを受けつつあるのです。
先ほど紹介したクルーズ船から下りた「日帰り」の団体客を運んできた観光バス会社は、九州在住の中国人が経営するケースもあります。彼らは稼働しない車両の処分を検討し始めたと聞きます。日本製品をそろえた中国系免税店は、コロナ禍が終わって、やっと息を吹き返したものの、また苦境にあります。
彼らの中には九州という地方にビジネスチャンスを求めた若手・中堅経営者が多くいます。母国からの思わぬ“仕打ち”を受けているわけです。そして、この船の運営会社も、中国人が好む日本へ、博多へ寄港できず、ビジネス上、大きな影響を受けているでしょう。
繰り返しになりますが、「アドラ・マジックシティ」は習近平氏の号令の下、国家の威信を示そうと誕生した大型船です。日本を含む外国を巡って、本来なら、中国の造船の実力を見せつけたいはずです。
その「アドラ・マジックシティ」が、次にいつ博多港に寄港するのか、私は市の担当者に電話で尋ねてみました。その答えは「1件、寄港の予約があったが、それも取り消された。3月末までは博多へ来る予定はありません」といものでした。これも今日の日中関係を映し出す数字といえます。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。







