◆法による裁きというより、復讐感を伴う政治裁判

豊田は戦犯裁判を次のようにまとめた。
<いわゆる「戦犯」の釈放、減刑等に対する一般勧告の重要緊急性についての意見 厚生事務官 豊田隈雄>※現代風に書き換え
以上の様に、正義と文明の裁きと称して行われた戦争裁判の実質は、法による裁きというより、復讐感を伴う政治裁判という色が極めて濃厚であったと言い得る。
豊田は意見書で、こうした裁判で有罪とされ、囚われている戦犯たちを釈放するには、日本政府の一般勧告(政治的勧告)が重要であり、しかも緊急を要することを訴えている。
◆犯罪意識は極めて薄く、敗戦の国家的犠牲者との感情

一方、豊田は、戦犯として服役している人たちの心情について、犯罪意識が極めて薄く、むしろ国家的犠牲者という感情を抱いていたことを指摘している。
<いわゆる「戦犯」の釈放、減刑等に対する一般勧告の重要緊急性についての意見 厚生事務官 豊田隈雄>※現代風に書き換え
一方、国内国外の服役者の心情は、たとえ、その行為を「犯罪」として是認するとしても、当時の全国民的な敵愾心の行き過ぎに基づく愛国的動因によるものであり、又、裁判そのものが前項に述べるように大なる不合理と極めて複雑な感情を醸成している結果、犯罪意識は極めて薄く、むしろ敗戦の国家的犠牲者であるとの感情を抱くに至るのも、また、やむをえない所である。