「日本から離れたくない」コロナ禍で強くなった思い
「日本から絶対に離れたくない」そんな思いを強くしたのはコロナ禍でのことだった。

2020年3月、故郷バージニア州に住む父が79歳で亡くなる。
すぐに米国に戻りたいが、折しもコロナによる水際対策が強化されていた時期。日本人以外の日本への入国が厳しく制限されていた。
「今、アメリカに行ったら日本に戻れなくなるかもしれない」永住権を持っていたとしても、自分は日本で所詮「ガイジン」。
「愛する日本」に拒絶されたような気がした。
結局、アンさんがアメリカに戻って父の葬儀が執り行われたのは2022年秋。日本が海外からの入国制限を緩和した頃だった。
父親の死から2年半経っていた。
日本国籍取得を決心
アンさんはアメリカから戻るときに自分の手元をみて思った。
「アメリカの青いパスポートでなく日本の赤いパスポートを持っていたい」
そこからの行動は早かった。

司法書士に相談し、領事館をめぐり、役所に通い、書類を揃えた。求められた「手書きの動機書」を書き、夫同伴の面接も受けた。
そして去年11月、晴れて日本国籍を取得。「1年がかりで得た宝物」だった。
その嬉しさを「人生で一番。大学合格より、結婚・出産より嬉しかったかも」と表現する。
SNSでも「日本国籍取得」を写真付きで発信。見知らぬ人から祝福を受け、1週間でフォロワーは1万人増加。勤務先の大学にはプレゼントやファンレターまで舞い込んだ。
「自分は愛する日本に歓迎されている!」そうアンさんは感じていた。
突然の炎上と誹謗中傷の嵐
ところがアンさんが日本国籍を取得し「多様性」について発信し始めた頃からコメント欄が荒れ始めた。
そして、SNS上でのアンケート調査で「コンビニで買い物をせずにトイレを使用しても良いと思うか」という問いに対し、アンさんが何気なく「コンビニのトイレを使用した時、店員さんから”何か買い物をして下さい”って言われたよ」とコメントしたところ、炎上した。
その部分だけが引用され「日本では当然のこと。買い物をせずにトイレを使用するなんて図々しい。アメリカに帰れ」「米国スパイが日本の常識に物申す」「日本国籍得ても、所詮、キカジン(帰化人)」などの書き込みが相次いだ。
驚いたがその後も気にせず、ジェンダー問題や多文化共生などについて発信するたびに「日本を侵略するな」「国籍を返上しろ」「帰化制度廃止すべき」等、書き込まれ、殺害予告まで届いた。