◆死刑「廃止」「存続」アナウンサーたちも意見割れる
神戸:私自身は、「死刑は廃止だろう」と、ずっと昔から思っています。田畑さんは?
田畑:僕も、最高刑は無期懲役がいいんじゃないか、と。
神戸:理由は何ですか?
田畑:まず、人が人を殺すのはよくない。法治国家の判決によって、結局死刑で人を殺してしまうことにつながる、というのは、何か矛盾しているんじゃないかと。
神戸:なるほど。僕も同感です。殺人罪を犯した人間に対して「死をもって償わせろ」という感覚は、被害者感情、国民感情としてわかるんですけど、1人殺しただけではほぼ死刑にはならないですよね。判例の基準がありますから。2人以上です。
神戸:つまり、自分の家族が1人殺されても相手は死刑にはならない、ということです。「死をもって償え」「自分の家族が殺された時、犯人を死刑にしなくて許せるのか」と言われても、現実論として、ほとんどの場合は死刑にはならない。感覚的に「自分の家族が殺されたら死刑」というのはわかるけれど、ほとんどそうなってはいない、という現実があります。
神戸:また、死刑がなくなっている国、停止されている国でも、被害者感情は同じですよね。これでは、あまり死刑存続の理由にならないんじゃないか、と僕は思っています。
◆死刑廃止論を揺るがした映画
神戸:国が命を奪う死刑については、基本的にはずっと否定的だったんですが、ある映画を観て、私は逆の感想を持ちました。その映画とは『デッドマン・ウォーキング』(ティム・ロビンス監督、1995年公開)です。死刑囚と、死刑囚をずっと世話をしていく尼僧の物語なんですが、最後は非常に残虐な形で死刑を執行されます。死刑廃止論から原作も書かれ、映画も作られたと言われています。
神戸:死刑に至るまでの過程で、どんなことが起きているか。人はただ生きているだけではなく、もし本当に罪を犯したとしたら、いつ死刑を執行されるのか、と怯えて過ごしていくわけですね。刑罰としての死刑は「すぐに執行してしまえばいいんじゃないか」と言う人もいるけれど、私はこの映画を見て「逆だな」と思いました。
神戸:死刑があるのであれば、しっかりと考えて苦しむ時間を作ることこそが償いにつながるのではないか、と考えました。僕が唯一、死刑存続に理由があるのではないかと考えられるのは、その時間をどう過ごすか、です。自由を奪われ、死刑がいつ執行されるかわからない状況で。
神戸:今回の大阪地裁判決でも、事前に執行を伝えるのは、心身が不調になり、告知自体が非常に残酷だという意見もあったようですが、私はそれ自体が刑罰なのではないか、今の死刑について「認める」とすれば唯一この点だけがあります。
神戸:基本的には廃止していくべきだと思っていますが、いろいろ議論をして考えていく必要はあります。突然誰かに聞かれたら「死刑はあっていいんじゃないか」と答えますから。議論していないからこそ、8割が死刑に賛成なんだろうと思っています。
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。ニュースやドキュメンタリーの制作にあたってきた。報道部長、テレビ制作部長、ドキュメンタリーエグゼクティブプロデューサーなどを経て2023年から報道局解説委員長。最新ドキュメンタリーは映画『リリアンの揺りかご』(4月19日からU-NEXTで有料配信予定)。







