◆サッカーファンが習近平政権を支える一因に

底なし沼のような、中国サッカー界の腐敗。肝心の中国代表チームの成績はというと、2026年ワールドカップのアジア2次予選、「中国代表対シンガポール代表」の試合が3月26日夜、中国の天津で行われた。「日本対北朝鮮」の試合も、平壌で行われる予定だった日だ。

FIFA(国際サッカー連盟)のランキング88位の中国は、シンガポールに、4対1で勝った。2次予選4試合を終えて、中国はグループ4か国のうち、第2位。同じ組には韓国もいる。サッカー熱の高い中国だが、中国の男子代表チームがワールドカップ本大会に出場できたのは、2002年の日韓大会ただ1回だけだ。それ以降の5大会は出場できていない。

組織が賄賂で、ガタガタ。これでは到底、勝つことはできない。中国のファン、サポーターは歯ぎしりしているだろう。話は少し違う角度になるが、習近平政権は、徹底した腐敗撲滅運動を進めている。そのキャンペーンが、サッカー界にも及んだ。国民は、治安を最優先する今の政権のやり方に、息苦しさを感じているが、中国社会で格差が広がる中、腐敗撲滅に対しては支持している。つまり、習近平体制を支える一因にもなっている。

ファンとしてはなかなか結果の出ないサッカーのナショナルチームを強くするためにも、膿を出し切ってほしいと願うのは当然だ。一方、習近平政権は、自分たちの権威を高めるために、分野にかかわらず、汚職撲滅を徹底的に進めるだろう。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。