今年で42回となる大分国際車いすマラソンが11月19日に大分県で開催されます。16回目の大会で日本人初となる男子マラソン総合2位の記録を残し、現在も400mと800mの日本記録保持者の廣道純さんに、インターネットのライブ配信を中心に様々な活動をしている「はなうた」さんが大会の見どころと注目選手について聞きました。

はなうた:
まずはレースの見どころについて教えていただけますか?
廣道純:
車いすマラソンの魅力といえば、何と言ってもスピードですね。2年前、大分国際車いすマラソン40年の歴史の中でコースが変更になり、周回コースとなりました。観戦する人はフルマラソンを2回、3回と複数回観戦できるチャンスが生まれたんですね。特に、弁天大橋という大きな橋を渡るシーンは見逃せません。

上りでは力強く手だけで漕ぎ、下りに差し掛かると最高速度に達します。時速60キロにもなる瞬間があり、それはもう息をのむような速さです。車いすだと目線が低いため、恐怖心を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、トップ選手たちはノーブレーキで走り、風よけとして前の選手の後ろについていきます。そこが競技の醍醐味とも言える部分ですね。
はなうた:
廣道さんも今年で30回目の出場となるそうで楽しみですよね。ところで、車いす生活においては身体活動量が少なく基礎代謝も低めになりそうですが、その点、食事で何か気をつけていることはありますか?
廣道純:
車いすを使っていると、実際には想像以上に楽な移動が可能で、スポーツをやっていないと運動不足になります。アスリートとしては日頃から運動量が多いので、健常者とほぼ同じカロリー摂取でも問題ありませんが、筋力維持のためにタンパク質を多めに摂取し、適切な糖質とのバランスを取るようにしています。長い選手生活を送る上では、食事と睡眠はアスリートにとって非常に大切な要素です。

はなうた:
レース中はどんなことを考えているんですか?
廣道純:
レース中は、常に頭を使いながら走っています。他の選手の動向や、誰が上り坂やスプリントに強いかなどを考えながら、最適なポジショニングを取るための駆け引きを行います。ゴールが近づくと、「そろそろ攻め時か」「まだ早いか」といった緻密な戦略が求められるのです。
はなうた:
レース前には選手の下調べもするんですか?
廣道純:
車いすレースでは、年に20本や30本走るのが当たり前ですから、様々な大会の結果をチェックして、選手の調子を把握します。例えば、「この選手は今年、調子がいい」「この選手は今までと比べるとそうでもないかもしれない」といった感じです。そうやって、どの集団で走るか、どの選手を最初からマークしないかを決めます。グループの中での予想が当たると、レースはさらに楽しくなりますね。視聴者としても、ドキドキする展開が楽しめます。選手たちがグループの中でどのように戦略を練るか、それを見るのも面白いと思います。

はなうた:
注目の選手はいますか?
廣道純:
マルセル・フグですね。海外の選手で2年前に世界記録を1時間17分で更新した驚異的な選手がいます。車いすレースでは風の抵抗が大敵ですから、グループで走る際には選手の後ろについて風を避けますが、その選手はそのような戦術を使わずに圧倒的な力で前を切っていくんです。

女子ではスイスの選手マニュエラ・シャーがいて、彼女は過去に何回もこの大会で勝っています。彼女のライバルであるカテリーヌ・デブルナーも新たに成長してきて、世界の大会でマニュエラを破って優勝しています。この女子の戦いも非常に見応えがありますね。
日本人選手に関しては、正直なところ男女ともにトップに食らいつくのは難しいかもしれませんが、男子では鈴木朋樹選手が唯一マルセル・フグに対抗できるかもしれないという希望があります。

また、女子では沖縄の喜納翼選手がいます。彼女は日本記録を持っていて、世界記録にも挑戦しています。ですから、今回の大会では男女ともに記録更新の可能性がありますね。

はなうたさん:
障害者スポーツ大会が大分で開催される意義についてはいかがですか?
廣道純さん:
大分県は障害者スポーツの先進県として知られ、日本国内でも最も力を入れている県の一つです。その歴史は長く、中村裕ドクターが車いすマラソンを創設した当初から、県内外に広く定着しています。大分で開催される国際車いすマラソンは、世界最大規模の大会の一つであり、県民にとっても楽しみの一つです。私自身もこの大会に特に力を入れたいと思っています。だから私も関西からわざわざ引っ越してきたのも、そのためなんですよ。
大会は11月19日(日)午前10時大分県庁前をスタート。トップランナーたちの熾烈な争いだけでなく、出場選手に沿道から多くの声援が送られます。

はなうた
大分市出身。大分国際車いすマラソン番組応援アンバサダー。SHOWROOMライバー、管理栄養士。フードスペシャリストとしての一面を持ちながら2023年10月9日にはデビュー曲『夢現』をリリース。歌手としても活躍中。