半世紀前の食中毒「カネミ油症」事件被害者の子や孫を対象にした国の調査で高い発生傾向があると認められた先天性異常について、症状を訴えた3人のうち2人が父親だけが被害者であることが分かりました。

次世代被害についてはこれまで母乳や胎盤を介した母親からの影響が確認されていますが、父親が摂取した毒が子供に影響を及ぼしている可能性を示すものとして注目されています。

これは2日、カネミ油症事件の原因物質である「PCB」製造企業カネカの責任を問うため、全国4都市5会場をオンラインで結び、被害者団体らが開いた集会で報告されたものです。

カネミ油症事件は、西日本各地で市販された油に製造過程で化学物質「PCB」が混入して起きた食中毒事件で、1968年に発覚後PCBを摂取した母親から「黒い赤ちゃん」と呼ばれた色素沈着の見られる子供が多数生まれ、研究の結果母乳や胎盤を通し子供にPCBやPCBが変性したダイオキシン類が移行したことが明らかになりました。

国は2021年、初の次世代調査に着手。調査を担っている全国油症治療研究班はことし6月、回答した次世代292人のうち3人が報告した先天性異常「口唇口蓋裂」について、一般より高い発生率であるとし、今後さらに解析を進めると発表しました。

被害者団体によりますと、その後の研究班との協議の中で「口唇口蓋裂」を報告した次世代3人のうち、2人が父親だけが被害者であることが分かったということで、父親が食べたPCBも何らかの形で子供に影響を及ぼしている可能性を示しているとしています。

長崎県諫早市に住むカネミ油症被害者の下田順子さんは「父親からの影響は被害者の間ではずっと話が出ていたこと。どこまで被害を浮き彫りにすれば救ってもらえるのか苦しい。調査結果を救済につなげて欲しい」と話しています。