鹿児島県内のほとんどの公立学校では、9月1日に新学期がスタートします。不登校などが増える傾向にあるといわれる夏休み明け。不安や悩みを抱える子どもを支援する施設「子どもの秘密基地」がいちき串木野市にあります。
学校や家庭以外でも安心して過ごせる「第3の居場所」とは?現状を取材しました。

いちき串木野市にある「子どもの秘密基地」。小中学生が対象のフリースクールや子ども食堂の拠点となり、学習支援や遊びの場を提供しています。

通っているのは、いちき串木野市に住む小学1年生から中学3年生までおよそ20人。長期間、学校を欠席していたり、経済的な理由で児童クラブに通えなかったりと、事情はさまざまです。

小学5年生の女の子です。仕事で夜に家を空けることが多いシングルマザーの母親に代わり、3歳と0歳の弟、祖母の世話をしている「ヤングケアラー」です。

(小学5年)「(Q.どんな世話をしている?)ミルクを飲ませたり、パンツを替えたり。(Q.つらい気持ちを誰かに話せる?)自分の心の中でそう思っているだけ。家族を大事にしたい」

こちらの小学4年生の女の子は、学校で居心地の悪さを感じています。

(小学4年)「(Q.学校は楽しい?)そんなに楽しくない。悪いことをしていないのに、悪口を言われたり、いじめられるから」

2人にとって、秘密基地は「心のよりどころ」のような存在です。

(小学4年)「(秘密基地では)みんな悪口を言わないし、仲良くしてくれるから学校とは違う」

(小学5年)「学校より安心できるところ。家では話せないことを友達に言えるからいい」

秘密基地を運営する真田裕美さん(52)と一人娘の希実さん(24)です。立ち上げたきっかけは希実さんの不登校の経験です。

高校3年の9月。大学受験が迫り緊張感が高まったクラスの雰囲気に戸惑い、学校に通えなくなったといいます。

(真田希実さん)「水を打ったように静まり返って、クラスが。温度感についていけず、不登校、人間不信になった。人を信じられなくなり、学校が怖くなり、不登校になった」

大学進学を断念し、5年間、家に引きこもりがちな生活を送っていましたが、今年4月、年中無休で子どもを受け入れられる秘密基地を開設しました。

(真田希実さん)「学校に居場所はなかったし、家にも居場所もなかった。第3の居場所がほしくて、そういった場所を、いちき串木野市の子どもたちも求めているんじゃないかと思ってつくった」

年中無休で利用は無料。子どもの悩みに耳を傾けます。

(真田裕美さん)「家でのことや学校でいじめられていることを私や娘に打ち明けてくれれば、子どもたちの役に立てるのではないか。学校に子どものことを話しに行けるので橋渡し、プラットフォームのような立場になれたらいい」

大学生のボランティアも訪れ、子どもたちと交流しています。

(鹿児島大学工学部3年 中原誠達さん)「ベンチで休憩しているときに、ぼそっと話を聞くことがある。その子がどうしたいのか。解決策を見出したいのではなく、話を聞いてあげることが大事。聞くことに徹している」

開設から4か月。頭を悩ませているのが、運営資金です。民家の改装にかかった400万円、家賃や光熱費など毎月10万円の活動費は自己負担で、ケアマネージャーの仕事で得た収入でまかなっています。

裕美さんは、「不登校の子どもの受け皿となるフリースクールへの支援に行政も力を入れてほしい」と訴えます。

(真田裕美さん)「(学校に)行けない子たちも行きたくなくて行ってないわけじゃなくて、どうしても行けない。そういう子にも平等に学ぶ機会を国が補助してほしい」

9月1日から始まる新学期。子どもたちには「不安な気持ちを一人で抱え込まず、悩みを打ち明けてほしい」とした上で、周囲の大人は小さな「SOS」を見逃さないでほしいと話します。

(真田希実さん)「年上、年下の友だち。誰か信頼できる人に小さくでも助けてと言えることができたら、その子は楽になれる」


【子どもや保護者向けの相談窓口】
◆チャイルドライン
フリーダイヤル0120‐99‐7777
18歳以下の悩み相談に応じる「チャイルドライン」は来月4日まで相談体制を強化し、午後4時から午後9時まで受け付けています。

◆かごしま教育ホットライン24
フリーダイヤル0120‐783‐574
24時間、いじめや不登校などの相談に応じています。

◆かごしま子供SNS相談・通報窓口
SNS相談(午後5時〜午後9時半)
SNS通報(24時間)