近年、生態系に影響をもたらす海のごみが問題となっています。環境省によりますと、2019年度、日本で回収された漂着ゴミの量は27万トン以上に上り、そのうち鹿児島県は、全国で6番目に多いおよそ1700トンでした。
こうした中、漂着ごみで作ったドレスのファッションショーが10月30日に吹上浜で開かれました。
漁に使う網で出来たロングコートに、ペットボトルが装飾されたドレス。鮮やかな色合いが目を引くワンピースは、歯ブラシやライター、ストロー、フォークなどが幾重にもなっています。
いちき串木野市から日置市、南さつま市までのおよそ40キロ続く吹上浜。日置市の海岸で10月30日に開かれたのは、ファッションショー「ゴミコレ吹上浜」です。衣装に使われている材料は全て、吹上浜に漂着したごみです。
(ハカタさん)「(漂着ごみは)素材として僕の中では貴重なもの。いい感じに削られて丸みがあったりする。新品のプラスチックにはない魅力があるので面白い」
ゴミコレのプロデューサーで、ドレスを製作したアーティストのカズヒロハカタさん(42)。日置市吹上町を拠点に活動し、5年前から漂着ごみを使った服作りを始めました。漂着ごみの魅力を伝えたいと開いたゴミコレは、今年で4回目です。
(ハカタさん)「漂着ごみを使って面白いものができそう、というワクワクを共有したい」
午前10時。ゴミコレは、ステージとなる浜のごみ拾いから始まります。県内で回収されるプラスチックなどの漂着ごみは、全国で6番目に多い年間1700トン。ポイ捨てされたものや海外から流れ着いたものなどで、環境汚染や生態系への影響が問題となっています。
この日も海岸ではペットボトルやごみ袋などが流れ着いていました。出演するモデルや、スタッフなどおよそ20人でゴミを集めました。
(スタッフ)「(ごみ拾い)初めてした。こんなに落ちていると思わなかった」
(モデル)「ピンクのストローだったり洗濯ばさみ(拾った)。全部可愛く見えてくる。このイベントがきっかけで、ハカタさんのように素材として考えるように」
集めたごみはサークル上に並べ、ステージに見立てました。
モデルのヘアセットやメイクを担当するのは、鹿児島城西高校ヘアーデザイン科の生徒たち。衣装に合うよう、試行錯誤していました。
(生徒)「ドレスが白っぽいので、白っぽい紫のアイシャドウを塗った。楽しい」
(生徒)「アイラインの色を何色にするか悩んで(ハカタさんに)聞いた。勉強になって、良い経験になった」
(ペットボトルドレスのモデル)「着心地、重いです(笑)ドレスを見れば、こういうごみが海に流れ着くんだと視覚的に訴えられると思う」
いざ迎えた、本番。およそ500人の観客が、秋の吹上浜に集まりました。
黒いごみだけを使ったドレスや漁業用の浮きでできたベストなど、ハカタさんが手がけた10着の衣装が、海を背景にダンスを交えながら披露されました。
(ハカタさん)「まずは見た目のインパクトやショー、パフォーマンスを楽しんでもらいたい。どういう海洋ごみが素材に使われているのかなど、海洋ごみからいろいろな情報が見えてくる」
(観客)「本当に可愛くて楽しかった」
(観客)「ごみだけであんなにきれいに(服に)なるんだ」
「こういう緑色のものとか(素材に)使えそうだなと思った」
(観客)「ごみであんなに立派なものが出来るなんて」
「どんどん広げていってもらいたい」
(ハカタさん)「海洋ごみで作ったからという説教臭いことではなくて、海洋ごみが欲しい、必要だから拾うっていうのが結果的に砂浜の環境美化にもつながるし、そういったもののほうがSDGs持続可能な開発目標(だと思う)。本当にやりたいことが結果的に繋がるっていう『ゆるいSDGs』そういう流れが良いのかな」
ハカタさんの手によって新たな命が吹き込まれた漂着ごみ。多くの人の目を楽しまながら海の現実を伝えます。
マルヤガーデンズで来月10日から、ハカタさんの作品の展示会が行われます。今回のゴミコレで登場した作品も並ぶということです。