介護が必要な人たちにメイクやネイルケアで心の元気を届ける、「介護美容」に取り組む看護師が盛岡にいます。高齢者や障害者はもちろん、その家族にも笑顔の輪を広げる活動を奥村キャスターが取材しました。

「おはようございます」

盛岡市の介護施設を訪れたのは、高齢者と障害者に特化した美容サービスを行う「なごはち」の門間麻美さんです。
この日は、施設に入居している女性のネイルケアのためにやってきました。

「順子さん、宜しくお願い致します きょうね。爪をきれいにさせていただくので。 緊張してる?大丈夫大丈夫」

紫波町出身の門間さんは看護短大を卒業した後、一度は県内の病院で勤務しましたが2020年に東京の大学病院の救命救急センターへ転職しました。
働き始めてすぐに猛威を振るい始めたのが新型コロナウイルスです。

「面会ももちろんだめでしたし、面会がだめになると救命センターだと家族に会えないまま亡くなる方も多くて、もうちょっと違う形で家族や本人と向き合って一人一人の時間を大切にしていきたいなと思った時に看護師だけじゃ足りないのかなと感じてしまって」

この期間に出会ったのが「介護美容」という分野でした。
東京で働きながら専門のスクールに通って高齢者や様々な病気・障害のある人の肌質や手入れ法を学び、メイクやネイルケアの技術を身に付けました。

2023年、岩手に戻ると看護師として高齢者施設で働きながら介護美容サービスの事業を立ち上げ、2024年「なごはち」を開業しました。

「気になる色あります?やっぱりこれかこれ これかこれ?この二つ?きれいだ」

この日サービスを受けた井上順子さんは、長年連れ添った夫を亡くしたばかりです。
気落ちしているので元気づけたいと、ケアマネージャーと家族が門間さんにネイルケアを依頼しました。
使うマニキュアは肌に害を与えない「水」が主成分の「水性ネイル」です。

こちらはホタテの貝殻で出来ていてお湯やアルコールで簡単に落とせます。
大好きな水色になった爪を見て井上さんの表情が変わりました。

「きれいだね。かわいい」

丁寧に2度塗りをして、花の模様も施します。

「父ちゃん生きてたら見せたかった」
「何て言ったかな?」
「良いぞーって言うよあの人なら」

「亡くなっちゃったからね。でも順子さんの心の中では生きてるからね」
「そうなの」
「(嬉しそうにじっと見つめる)」

最後はアロマオイルでマッサージをして、完成です。

「お疲れさまでした。ありがとうございました」

井上さんと周囲に笑顔が広がりました。

「最後の方は最初と比べ物にならないぐらい笑顔が素敵だったので、やって良かったなと改めて思いますね」

次に門間さんが訪れたのは盛岡市内の花屋です。

新たな試みとしてメイクと花束をセットにして介護が必要な人にプレゼントするプランを企画しています。

「ご本人だけじゃなく家族や施設のスタッフを巻き込んで笑顔になれるんじゃないかと感じます。(笑顔何倍になりそうですか?)100倍ですね」

看護師の知識と美容の技術を活かして。最期までその人らしく輝けるように支援する。門間さんの夢は広がります。

「1人でも多くの高齢者の方を笑顔にしていきたいと常日頃思っている。1人でも多くの方が笑顔になって生きてて良かったと最期の瞬間思ってもらえるような環境を作りたいと思っています」