運輸安全委員会が、15日発表した経過報告書から、沈没までに何が起きていたのか詳しく見ていきます。
4月23日カズワンはウトロ漁港を出発しますが、知床岬を折り返したあたりから、波の高さは1メートルを超え、船の甲板にまで波が打ち付ける状態になりました。
船首側の甲板、人が乗る部分には、船倉への出入り口「ハッチ」があります。運航中、このハッチの蓋は閉じていなければなりません。
しかし、カズワンのハッチの蓋は、部品の摩耗などにより、以前から、確実に閉じられない状態になっていたことが、関係者の証言などでわかりました。
この状態で、高波により船が大きく揺れたため、ハッチの蓋が開いてしまい、海水がハッチから船の中に入り始めますハッチからの浸水について、専門家の見解を聞きました。
水難学会会長で、実際に陸揚げされたカズワンも視察した、斎藤秀俊さんです。
水難学会 斎藤秀俊会長
「(ハッチは)しっかり閉めて運航するのは基本中の基本。船はどこか隙間があったら水が入る。水が入ったら沈没に至るわけなので、水密をしっかりとるのは基本中の基本。いろんな推定が確定していないのが、ハッチの蓋がみつかっていない、これはかなり大きな話。ハッチのふたがどこかにあって、確実にどう外れたかがわかれば、今回の沈没の原因が特定できる」
斎藤会長によると、基本中の基本として、どこからも水が入り込む隙間がないようにするのが鉄則ということです。
では、さらに沈没までの経緯を追っていきます。
ハッチから入り始めた海水は、船首区画にたまります。各区画は隔壁と呼ばれる壁で仕切られていますが、カズワンの隔壁には、写真のような穴が空けられていたため、大きいものだと人が通れるような穴でしたが、海水が、この穴を通って、隣の区画へと入っていきます。
ついには、機関室にあるエンジンの電子部品が海水につかってショートし、エンジンが停止してしまいます。
さらに、ハッチがある甲板では、こんな現象も起きていました。
事故後に撮影されたハッチの写真を見ると、本来あるはずの蓋が無くなっています。金属製の蓋は、2つある「ヒンジ」という部品で、ハッチとつながっていましたが、このヒンジを拡大してみると、どちらも破損していたことがわかります。
その原因ですが、船が大きく揺れ、ハッチの蓋が開いた時、蓋は120度の角度で、ストップする仕組みになっています。この状態の蓋に、高い波が打ちつけたことで…
衝撃に耐えきれずに、ヒンジが破損します。これにより外れた蓋が、すぐそばにある客室のガラス窓を破壊します。大きくあいた窓から、大量の海水が入り込み、沈没に至ったものと見られます。
水難学会 斎藤秀俊会長
「隔壁の穴は、かなり今回、重要な役割を持ってしまった。(穴が開いていなくて)船首だけに浸水がおさまっていれば、角度が極端に高くならない。高くならなければ、ハッチが波に飛ばされて、ガラス窓を突き破る可能性も低くできた」
12月15日(木)「今日ドキッ!」6時台放送