春に取材した、北海道のおびひろ動物園のキリンです。新しいキリン館への引っ越しに時間がかかっているとお伝えしましたが、ついに引っ越しに成功しました。

子どものすぐ目の前でエサをほお張るキリン。

来園者
「キリンさん?キリンさんだ!」
「迫力がすごくてあんなに舌が長いのも初めて知った」

ここはおびひろ動物園の新しいキリン館。全国でも初めてという、2階から観察できるガラス張りの展示室が特徴です。

先週土曜日にキリンの公開にこぎつけましたが…ここまでの道のりが、長かった。

2024年撮影された、メスの「ユルリ」(8才)の映像です。新しい飼育室に、なかなか入ってきません。

おびひろ動物園 渡邊誠克 園長
「手前まで来るが(ユルリは)戻ってしまった」

おびひろ動物園 渡邊誠克 園長
「キリン側の理由もある。人間の都合通りにはいかなかった」

キリンのペースに合わせて、ゆっくり、ゆっくり。新居の完成から公開まで、かけた時間は実に、1年4か月。

キリン担当の飼育員
「「ここでやらなきゃ誰がやる!」という気持ちでやった」

キリン一家の引っ越しを「もうひとホリ」します。

今から60年以上前、1963年に開園した「おびひろ動物園」です。

キリンの飼育施設は1971年にできましたが老朽化のため、2024年8月、約5億8600万円をかけて、新しい「キリン館」を造りました。

オスの「メープル」(11才)と、メスの「ユルリ」(8才)、その2頭の息子「ユメタ」(3才)も引っ越しです。

ところが。

コンクリートの壁に囲まれた飼育室。

これまでの施設と同じ環境ですが、簡単には入りません。

エサを持った飼育員が先に入って誘導しますが、「ユルリ」は立ち止まって、後ずさり。

おびひろ動物園 キリン担当 片桐奈月さん
「キリンは本来おくびょうな性格。少し神経質な面が強かった。新しいところは動物にとっては怖い。「大丈夫だよ」と安心した場所にする方法を考えなければいけなかった」

結局、元の施設で冬を越し、4月に訓練を再開することに。

おびひろ動物園 キリン担当 片桐奈月さん
「メープル(オス)はすぐ入ったが、ユルリ(メス)は入らない。どう緊張感をとくか、部屋のどこで緊張するのか、餌をどこに置けばいいか観察して…」

ユルリは特に警戒心が強く、慣れない場所には行きません。

餌箱を毎日30センチずつ部屋の奥にずらすなど、地道に工夫を重ねました。

おびひろ動物園 片桐奈月 飼育員
「4月末から順調にメスも協力的に進んでまして、部屋の扉を閉めるのがゴール。いかにパニックにならないか注意を払った」

8月にようやく部屋の中を動き回れるようになりました。

おびひろ動物園 キリン担当 片桐奈月さん
「(9月に)「今なら扉を閉められるかな」というタイミングを狙った。部屋に入ってからはすぐ順応し、休む姿やリラックスしている様子を見て一安心」

8月の監視カメラ映像。
ユルリが無事に入ったことで、息子のユメタもスムーズに移動。親子3頭が無事、キリン館に移りました。

さらに、展示室での公開に向けたトレーニングを重ねます。

おびひろ動物園 キリン担当 片桐奈月さん
「(室内の)ガラスを認識させるのに、ロールスクリーンを下ろし(体を)反射しないように、ここは壁でこちらに来られないと、自分と客のエリアを認識させた」

そして、ついに。

おびひろ動物園 キリン担当 片桐奈月さん
「エサ入れは工夫がされていて、あちらに丸い穴が開いている。直径5センチぐらいの穴はキリンが舌を入れて餌食べる仕組み。本来、高い木の葉を舌で引っ張って食べる」

来園者
「かわいい。ベロ長~い」
「みんなの力で動物も(新居で)あったかくなってよかったと」

当面の間、公開するのは展示室にすぐに慣れたメープルが中心。奥の飼育室には、ユルリとユメタの姿も見えます。

こちらは、ユルリとユメタが暮らす飼育室。10日、特別に案内してもらうと、2頭とも元気そう。

おびひろ動物園 片桐奈月 飼育員
「キリンいないの?と冬も聞こえてきたこともあって心苦しかったんですけど 今年はいつでもキリン見れるよというところをアピールしていきたい」

じつに1年4か月越しの公開。よかったですね!

●キリンは警戒心が強い動物
●けがをさせないよう、慎重に引っ越し
「個体差があるので、ユルリにとっては今回の時間は必要だったし、時間をかけて正解だった」

おびひろ動物園は2026年2月28日まで、日曜と祝日の営業です。12月29日から2026年1月3日は休園します。

冬休み、暖かいキリン館でじっくりとキリンを観察してみてはいかがでしょうか。