◆《「自分がもっと変わっていなきゃ…」生き方を大きく変えた事件》

 この日、松田さんが訪ねた先は、駄菓子の問屋。月に一度の仕入れです。

松田裕輝さん(27):
「焼き肉、かば焼き…子供が意外と甘いものではなくて、しょっぱいものが好き。“酒飲み”みたいな…」

今回の仕入れは約4万円分。駄菓子店の経営は、松田さんのほぼ持ち出しです。子どもの居場所を作る意義について、少年非行など、犯罪社会学の研究者は、話し相手の選択肢が増える大切さを、こう話します。

摂南大学犯罪社会学 竹中祐二准教授:
「子どもにとって、親や学校や友だちではない…そうじゃない繋がり、選択肢、話し相手が増えるということが、まず望ましい。時には、ご自身の経験がフック(きっかけ)になって、時には駄菓子屋Barとしての立場がフックになって、子どもがこの人の話なら、聞いてもいいかなって思える存在になっているところがポイント」

 実は、松田さんの人生に、大きな影響を与えた事件があります。高校時代に知り合った女性が、2歳の娘に十分な食事を与えず、衰弱死させたのです。

松田裕輝さん(27):
「あの時、ああいう風に関わっていた人が、まさかこんなことになるなんて…と思ったんですよね」

「このままだと自分が死ぬか、他人を殺すかもしれないと思った時期はありましたね。自分がもっと変わっていかなきゃと思いましたし、誰かのお手本になったり、誰かを助けになったりするような人間になりたいな…と」

 松田裕輝さんと弟たちが営む駄菓子Bar『ネイムレス』に、この日も、子どもたちが連れ立ってやって来ました。

店を訪れた子ども:「こんにちは!」

孤独や孤立の予防線は、人とのつながり―。遠回りしてきたからこそ、松田さんは、その大切さを誰よりも知っています。