◇《虐げられた歴史と、その延長上にある戦争を語り継ぐ意味―》

磯貝拓記者
「こんばんは、よろしくお願いします」

北海道の平取町で、遺骨の返還運動などにも取り組む、アイヌ民族の木村二三夫さん(76)です。旭川市の部隊に入隊した父親の一夫(いちお)さんからは、差別についての話は、ほとんど聞いたことがないと話します。

木村二三夫さん(76)
「親父は、運動神経が抜群だったよ。だから銃剣術、あと相撲なんかも、軍の中でも強かったみたい。親父は、あまり俺たちには戦争の話をしなかったけれどもね」

旭川の部隊に入隊した父親の一夫(いちお)さん

部隊の中では、本当の意味で「平等」だったのか?それとも気丈に振る舞い、息子に多くを語らなかったのか?いま、本当の思いを父親に尋ねることは叶いません。

ただ、虐げられてきたアイヌの歴史と、その延長上に、戦争があったということを伝えることは、大事だと話します。

木村二三夫さん(76)
「エゾオオカミより俺のほうが、声でかいんじゃないかなと思いながら吠えているよ。みんな勉強しよう、若者たちは特にね。政府が責任を持ってね、やっぱり過去を振り向かせなきゃ駄目だよ。日本のためだ。アイヌのためだけじゃない。日本国のためだ、子どもたちのためだ」

かつて日本政府により、同化政策が進められたアイヌ民族。当時、徴兵されたアイヌの人たちが、どれほどいたのか。そして戦地で命を落としたのか、その正確な記録は残っていません。

世永聖奈キャスター)
学校の授業ではなかなか教わる機会のない、教科書には出てこない歴史。どのように学び、伝承していくかというのは非常に難しいところです。

アイヌ民族は、日本政府による同化政策のため、徴兵された人数も、戦死者数も正確な記録は残っていません。また戦争にどう関わったのかなどについても、詳細に記された資料は、極めて少ないということです。

堀啓知キャスター)
私たちの取材に応じてくれた濱田清隆さん、そして木村二三夫さんは「歴史を学び、改めて差別のない社会になればいい」と話しています。特集でした。