特集です。
戸籍の性別を変えられるようになった2004年以降、性別変更した人の数は1万人を超えると言われています。
実際に変更する場合、どんな出来事が待ち構えているのか、自分らしい「性別」で生きたい、あるトランスジェンダー女性の10か月です。
明るいロングヘアにショートパンツ、札幌に住む、ありすさんです。
ありすさんと出会ったのは、去年12月。
ありすさん
「普段?プライベートで外を歩くときは、おとなしめにする。無口よ。声出したら絶対振り向かれるもん。ハハハ」
このバーのスタッフとして働いています。
心は女性、身体は男性のトランスジェンダーです。
ありすさんは、両親と暮らしています。
お母さんのゆみ子さんとは、大の仲良しです。
ありすさん
「高校のときは好きな男の子いたね。化粧したいとかも出てきているよね」
自分らしく生きてきたありすさん。
男性のパートナーと交際していたこともありますが…
ありすさん
「むこうが浮気して、そっちが良くなって、そっちに移るってなって振られる側になった、普通に女の子に浮気されて女の子と結婚しちゃった。そのまま」
ありすさんはこのとき、人生の大きな一歩を踏み出そうとしていました。
札幌医科大学附属病院は、性同一性障害の専門外来がある日本でも数少ない病院です。
ありすさんは、性別適合手術を受け、身体も戸籍も女性に変えると決めています。
診察には、バーの店長も付き添います。
2度と元に戻れない手術のため、複数の医師による診断、カウンセリングを受ける必要があります。
札幌医科大学泌尿器科学講座 舛森直哉 医師
「明らかに本人の生活の質が上がるのではないか。あと、嫌悪感が軽減する。望む性別で社会でも活動できるようになると。社会的にも受容される」
性同一性障害特例法は、戸籍の性別を変えるためには、精巣や卵巣などの生殖腺がないこと、または、その機能を永続的に失っていることが条件です。
このため、自分の子どもを持つことは、できなくなります。
元の性別の機能によって子どもが生まれた場合、混乱や問題が生じる可能性があることなどが、その理由です。
ありすさん
「それはそれでいいのかなしょうがない、それ以外何で基準つけるのってなるから、じゃあ温泉どうなるのってなるし、スポーツジム行ったとき更衣室問題は?ってなると思うから」
入院と手術の費用は、およそ190万円。
ありすさん
「手術当日の朝です。ネーどきどきが止まらない…」
手術にいたるまで、3年。
専門医の数も少なく、この病院でも手術を受けられるのも年間10人ほどだといいます。
手術から9日目、ありすさんは退院の日をむかえました。
ありすさん
「ただいま、痛いよねまだ、つらい」
母のゆみ子さん
「どうだい調子?…はいおみやげ」
兄
「どうも~」
ありすさんの兄も、様子を見にやってきました。
ありすさん
「手術の前の日、涙が勝手に出るの」
ありすさんの母ゆみ子さん
「泣きながら電話よこすから」
ありすさんの母ゆみ子さん
「手術する前からなんとなく、女の子と思って接しているから、手術したからといって女の子って感じでもないから、子どもには変わりない、可愛い可愛い子ども」
性別変更のためには家庭裁判所に申し立てをする必要があり、性別を変えたい理由を書かなければいけません。
ありすさん
「生きやすいように生きたらこうなっちゃいましたでいいんじゃない?超簡単じゃない?もうこうなっちゃったでいいよ、こうなっちゃった、びっくりマークで」
ありすさん
「きょうはなんか書類を出しに来ました」
性別変更の申立書も、裁判所に提出。
ありすさん
「家庭裁判所から届きました」
手術を決断してから、3年。
ようやく戸籍に「女」という文字が記されます。
「トランスジェンダーの女性」として生きてきた、ありすさん。
ありすさん
「そこまで実感ないんだよね。だって今まで通りの生活だし、普通に暮らしていけたらいいなと思うよ。普通に何も考えないで普通に生きられるようになればいいなって」
日本では性別変更の条件で手術が必要とされています。
これに対し、WHOなどの国連機関は、性別変更に手術を必要とすることは「人権侵害」だとする共同声明を発表しています。
国際的には、手術要件を撤廃する国が相次いでいて、日本は性別変更のハードルが高い国といえます。
9月21日(水)「今日ドキッ!」午後6時台