6日、三重県四日市市に新たなカフェがオープンしました。運営するのは「削る」技術がウリの町工場。その狙いに迫ります。
(客)
「おいしいです。食器もかわいい」
「味も染み込んでいて柔らかくてとても美味しい」

6日に三重県四日市市にオープンしたのは、工業地帯になじむ倉庫風のカフェ。
四日市コンビナートをモチーフにしたピクルスと四日市市の名物、トンテキが乗ったカレーがイチオシです。

一風変わったこのカフェを経営しているのは、自動車や飛行機などの部品を1000分の1ミリという高い精度で削って加工する町工場。
(中村製作所 山添卓也社長)
「子どもの頃の夢を今回実現できてうれしい」

こう話すのは、創業100年を超える中村製作所の4代目社長山添卓也さん。
なぜ町工場がカフェを…。原点には今は亡き先代の言葉があります。
(中村製作所 山添卓也社長)
「父親が生前よくつぶやいていた言葉で『空気以外何でも削ります』」

22年前に父を亡くし、24歳という若さで会社を継いだ山添さん。
(中村製作所 山添卓也社長)
「リーマンショックが起こったときに、売り上げが90%ダウンしてしまった。やっぱり父親たちが築いてきた、できないって簡単に言うんじゃなくて、できる方法を一生懸命考えるってのが我々の会社の良さだなっていうことで」
会社の危機に支えとなった「合い言葉」。
会社の看板や壁に掲げるとある変化が訪れます。
(中村製作所 山添卓也社長)
「わらしべ長者のような話でした。空気以外何でも削れるんだったらこういったモノも削れますかっていう相談が来たり。印鑑なんか削ってたら、潜水艦の部品削って欲しいという話になったり。その潜水案の部品をやっていたら今度は飛行機の部品を、今度展示会に持って行ったらロケットの部品を削って欲しいっていう話に」


「削る」技術ではどこにも負けない。業界でも高い評価を得られるようになったころ、こんどは畑違いの新たな商品開発に打って出ます。
それがこの「ベストポット」という商品。四日市伝統の「萬古(ばんこ)焼き」と金属の蓋を組み合わせた今までない土鍋です。

(中村製作所 山添卓也社長)
「ベストポットをこれから精密に削ることによって無水調理ができる鍋として加工します」
土鍋と金属のフタを精密に削り、蒸気は逃がさず、かつフタがくっつかないギリギリの範囲に収める、まさに「匠」の技。
この密閉性こそがベストポットの最大の特徴。
米と水を入れて沸騰したら火を止める。20分ほど待てば余熱で美味しいご飯が炊き上がります。

また、独自に開発した特殊な形状で高い蓄熱性を実現、煮物も火を切った後の余熱で作ることができます。

(客)
「炊飯器で炊いた感じとは違って、粒がひとつひとつしっかりしている感じがします」
「本当に美味しくて大満足です」

きょうオープンしたカフェでは、ベストポットでつくった自慢の料理が…。
さらに山添さんの念願の夢だった、カフェと一体の「見える工場」もオープン。今後、ベストポットの製造体験も楽しめるようになります。
人を楽しませるような工場をつくりたい。山添さんは力を込めます。

(中村製作所 山添卓也社長)
「三重県や四日市市の食材を、多くの県外の方やインバウンドの方にも知ってもらえるハブ(拠点)になりたいなと思う。萬古焼っていう四日市の伝統工芸って我々は知ってるんですけども、全国的にはまだまだ知られていないので、いろんな四日市の財産を知っていただく場所になっていったらいいなと思ってます」
「空気以外何でも削ります」
削る技術で大きな夢の実現へ…。
町工場の挑戦は続きます。