南海トラフ巨大地震の発生に備えて、名古屋市内では初となる「命山(いのちやま)」という津波対策の整備がいま進められています。場所は子どもたちが遊ぶ「公園の中」です。

名古屋市港区の「富士文化幼稚園」。バスに乗り込んだのは年長組の園児たちです。

「きょうはどこに行きますか?」
(子どもたち):「命山!」
「命山はどうして作られたんだっけ?」
(子どもたち):「みんなの命を守るため」
「何から?」
(子どもたち):「津波」

向かった先は幼稚園の北隣。名古屋市内で初めてできた「命山」です。

「命山」とは津波や高潮などの浸水被害から命を守るために作られた「人工の丘」のこと。

海抜ゼロメートル地帯が広がる名古屋市港区では、南海トラフ巨大地震が発生した時、名古屋港の方から押し寄せる津波のほか、川の堤防決壊などで広く浸水することが予想されます。

港区の船頭場(せんどうば)地区は周辺に多くの住民が避難できる高い建物が多くはなく、住民らは12年前の東日本大震災以降、静岡県にある命山や津波避難タワーなどを精力的に視察した結果…。

(近くに住む 加藤豊さん:2021年取材)
「(袋井市の)命山を見学させていただいて(名古屋市に)『もっと大きなものを作ってくれ』と」

公園の中に「普段から子どもたちが遊べるような」命山を作ってほしいと名古屋市に要望。市は2021年4月から海抜7メートルの高さまで土を盛り、最大約3400人が浸水から一時避難できる命山が、ほぼ完成しました。

そして、きょう(22日)富士文化幼稚園の園児たちは、命山の見学に訪れました。

(子どもたち):「命山を作ってくれて、ありがとうございました」

道を進んでいき…、いつも園内から眺めていた命山に初めて足を踏み入れました。

間もなく卒園を迎える年長組の園児たちは、コロナ禍でこれまであまりできなかった合唱をして思い出作り、すると…。

工事を請け負う建設会社から約300個の風船が1人1人にプレゼントされました。そして…。

4月から新1年生になる意気込みと一緒に、風船は青空へと飛んでいきました。

(園児)
「(命山は)思ったより高かった」
「幼稚園からだと小さいと思ったけれど、登ってみたら大きかった」

津波など浸水被害のリスクを抱える、この地区の住民にとって、この命山は心強い存在です。

(保護者)
「高い建物が、このあたりにはないので(命山は)安心できる場所」
(富士文化幼稚園 笹野大栄・園長)
「ここに来る訓練もしていきたい。たくさんの子どもたちを連れて、最短の時間で、ここに来る方法を練習したい」

名古屋市は今後、避難ルートの舗装など整備を進め、新年度中の完成を目指します。