愛知県田原市の伊良湖岬から静岡県の浜名湖まで、およそ52キロに渡って続く“表浜海岸”。太平洋に面し、サーフィンの世界大会が開かれ、ウミガメもやってくるこの浜が「招かれざる物」である「流木」に埋め尽くされました。漁に行けない漁師や絶滅危惧種アカウミガメの産卵など流木の被害を受けた現場を取材しました。

「流木がひっかかって船を出せない」漁業にも深刻な影響が

ことし9月、東海地方に接近した台風15号が過ぎた後、海岸に流木が漂着。海岸線のほとんどで確認され、豊橋市でも長さ14キロにわたって流木で浜が埋め尽くされたのです。

(サーファー)
「ずっと向こうまで(流木が)ダーッとある感じ」
「海に入る時に歩いていて木が足に刺さっちゃう」

サーファーだけでなく、この辺りで行われている漁業にも深刻な影響がありました。長年刺し網漁でボラやコハダなどをとっている漁師、朝倉克尚さん(67歳)は、沖の方から木の塊が流れてきて漂着したと話しました。


(表浜・高豊漁港の漁師・朝倉克尚さん)
「300メートル分くらいある網だけど(流木が)取れない。網を傷つけずにゴミを取りきるなんてできない、もう処分するしか…」

台風の2日後に漁にでたところ、流木を確認。仕掛けていた網に流木がひっかかって使い物にならなくなった上、漂着した流木で船を出せなくなってしまいました。


(表浜・高豊漁港の漁師・朝倉克尚さん)
「海は季節で変わっていく、休んでいると(様子が)わからなくなってさみしい」

「ウミガメが産卵できない」絶滅危惧種アカウミガメが危ない?

地元の強い要望を受け、市は先月流木の撤去に乗り出しましたが、漁港周辺200メートル分を取り除くのがやっと。それ以外の場所は手付かずです。2か月以上経ったいまも、浜に残された流木。豊かな海のシンボルとなってきたウミガメにも深刻な影響が心配されています。

表浜海岸は絶滅危惧種に指定されているアカウミガメが、毎年5月から8月にかけて産卵する砂浜として知られ、豊橋市も民間と協力して保護に取り組んできました。


(アカウミガメ実態調査員・関かなえさん)
「このままだと(アカウミガメが)海に来れないし、ふ化しても帰れない。数が減っているからこそ環境を整えないといけないのに、さらに環境が悪化するという…」


関さんは年々減り続けるウミガメが安心して産卵できる海岸を維持したいとボランティア団体も設立。月に一度表浜のゴミ拾いを行っていますが、いまは流木と共に流れ着いたゴミもかなりの量で回収し切れない状況です。


以前はゴミ袋で27袋分でしたが、流木が来てからは倍以上の65袋。11月も1時間で60袋分以上を回収しました。それでもまだ大量のゴミが残っています。