長年の時を経て…「やっと結びついた。だからか!」
自動車関連で創業100年を超える老舗企業、実はその前年に社史を編さんしていた。そこには創業時から今に至るまでの時代の流れから、変革する自動車産業の中で企業としていかに生き抜いてきたのかが、事細かに刻まれていた。
それを我々に見せながら、突然「やっと結びついた。だからか!」思いついたように声をあげた現社長は、社史のページを慌ててめくりながら、「この理由がわかりましたよ」と本を持ち、そのページを我々の目の近くまで移動させ、興奮気味に語りはじめた。

そこには「モスクヴィッチの大赤字」「モスクヴィッチ事件」と明記されている。話によれば、なぜか、当時の社長がソビエト連邦の車「モスクヴィッチ」に熱をあげ、それを大量に買い付けては輸入車として販売したのだという。当時は、自動車整備をしつつも、車の輸入販売も手がけていたという佐藤自動車工場、その輸入車の白羽の矢がソビエトの会社だったというのだ。
しかし、当時はアメリカ占領化の匂いが列島全体に漂い、敗戦国ニッポンは食もご飯からパンへ、魚食から肉食へ、生活も欧米化するなど、アメリカの色合いが濃くなっていた時代だった。今のような多様性は、まだ社会には存在せず、アメリカ化することが国是とされていた時代だった。
その時に、そのアメリカの最大のライバルで、当時東西冷戦の東側の象徴のソビエトに傾注するなど、数十年後に経営を任された孫からすれば、到底理解できない出来事でもあった。