市役所に出生届けを提出するも、受理されませんでした。民法772条には「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」とあります。前田さんは、結婚して子どもを授かったにも関わらず、認められませんでした。生まれた男の子は2年間も無戸籍の状態にされてしまいます。

前田さんは、法律上の子である「嫡出子」として、生まれた子を認めさせる訴えを起こします。2人目の男の子も誕生しました。

前田良さん
「僕はおかしいと思うことに声をあげることの大切さを、子どもたちに伝えたかったんです」

一審、二審は敗訴。しかし、2013年、最高裁で勝訴。正式に親子として認められました。

前田良さん
「今はこうやって学校の授業とか、地域の方にお話をして、まずは僕はこういう人たちがいるんですよ、というの知ってもらう活動をしています。まず、僕は知らないと始まらないと思います。まずは、こういう人たちがいるんですよ、ということを知ってもらう。次、そこから気づきだと思います。そういう人たちが何に困っているんだろう、何に不自由さを感じているんだろうっていうことに気づく。そして、最後、それを行動に移してもらえたらいいかなと思います」

子どもの頃は、自分自身のことを話すことができなかった前田さん。今は、全国で講演活動を続けています。

前田良さん
「昔は自分自身のことを人に話すってことができませんでした。それはなぜか。自分自身が自分のことを受け入れることができていなかったからです。パートナーと出会った時、子どもたちと出会った時、自分らしく生きるって何かなって考えたんです。その時に思いました。ありのままに生きることだと」

前田さんは、自分自身を受け入れることができてから、良い出会いが増えたと言います。

人の生き方はいろいろな形がある、ひとりひとり違うことを知っていて欲しい。講演の最後、前田さんは集まった人たちに、そう呼び掛けました。

前田良さん
「世の中には本当にいろんな人がいます。いろんな生き方があります。そして、いろんな性があります。そして、いろんな家族の形があると思います」