「誰にも言うな」が、人を孤立させる
犯人グループが繰り返し口にしていた言葉があった。
「これは極秘の捜査です。絶対に誰にも言わないでください」
家族にも、友人にも、誰にも話してはいけない。
誰かに会った時も、その内容を伝えてはいけない。
そう何度も念を押された。
女性は、その言葉を疑わなかった。
「警察の捜査って、そういうものなのかなと思ってしまって」
さらに求められたのが、“定時報告”だった。
今どこにいるのか。
誰と会っているのか。
これから何をするのか。
朝、昼、夕方と、3時間ごとにLINEで報告するよう指示された。
「長男が2階にいます」
「これからお茶を飲みます」
そんな何気ない日常まで、細かく伝えていた。
「逃亡されると困るから、と言われて。特別な予定があるわけでもなかったので、真面目にやらなきゃと思っていました」
今振り返れば、完全に行動を管理されていた。
それでも当時は、自分が支配されているとは思わなかった。
むしろ
「潔白を証明するために必要なこと」
だと信じきっていた。
そして何より、誰にも相談できなかった。
「やっぱり、そういう時こそ誰かに言わなきゃダメだったんだと思います」
特殊詐欺が怖いのは、お金を奪うことだけではない。
人をひとりにして、
正常な判断を奪っていくことだった。










