「フルネームで呼ばれた瞬間、全部信じてしまった」
女性が最初に「これは本当かもしれない」と思ったきっかけは、意外にもシンプルなものだった。
電話に出た瞬間、相手が自分のフルネームを口にしたことだ。
「苗字だけじゃなくて、下の名前まで言われたんです。それで、“なんでそこまで知っているんだろう”って」
相手は郵便局員を名乗り、「中国から荷物が届いている」と説明した。
中にはパスポートやキャッシュカードが入っていて、大阪の郵便局で止まっているという。
身に覚えはまったくなかった。
それでも、フルネームを知られていたことで、一気に警戒心が薄れた。
「その瞬間、全部信じてしまったんです。詐欺なんて、全然頭になかった」
さらに大阪府警の警察官を名乗る別の男は、自宅の外壁の色まで口にした。
「そこまで分かっているなら、本物なんだろうなと思ってしまって」
後から振り返れば、不自然な点はいくつもあった。
荷物が届いているなら、住所は分かるはずなのに、なぜわざわざ確認するのか。
なぜ大阪府警が、自分の資産を調べる必要があるのか。
それでも、その時は疑うよりも、不安の方が押し寄せた。
「なんでかな、とは思ったけど、詐欺とは結びつかなかったんです」
“自分が犯罪に関わっているかもしれない”
そう思わされた時、人は冷静さを失っていく。










