例年より早い満開を迎えた桜。お花見がてらギャラリー探訪はいかがでしょうか。青森市の桜川にある画廊「ギャラリークレイドル」で開催中の「花見宴 油彩画展」を訪ねます。

「花見宴油彩画展」開催中のギャラリー クレイドル(青森市桜川)

ギャラリーに入ると、ヒンヤリとした空気と油絵の具の心地よい香り。コンパクトな空間には、花見さんの近作25点が展示されています。鮮やかな色彩とのびやかな構図。見ているだけで心がほぐれていくような気がします。

「静物:青い花瓶と薔薇」。青い花瓶は少し厚みがあるのでしょうか。ガラスの質感が伝わってきます。形もたわんでいて、フワリとした浮遊感さえ感じました。
もっと見たくなり一歩絵に近づいた途端、絵の端が1点ギラリと光りました。よく見ると絵の具の表面に反射した光。まるでそこだけ輝いているようです。偶然とはいえ一瞬ドキッとしました。

■花見 宴(はなみ うたげ)という名前について

「青森は寒いね」。花見さんは、上着をはおりながらやってきました。

画家 花見 宴さん

花見宴(はなみうたげ)は画家の本名。奥さんである花見さんと結婚したことが由来ということですが、なんとも雅なお名前です。きけば奥さんも現役の画家。

花見さん「そう、こっちの方がおもしろいと思ったから、あっちの家入ったんですよ」

■見ている人が絵に入りやすくするために

「絵を仕上げる際は、すべてを描き切らないようにしている」と花見さんはいいます。

花見さん「絵はかっちり描かないほうがいい。かっちりする絵は、見る人を拒絶するんですよ。北方ルネッサンスという西洋の絵は、きっちりとしていて拒絶するような絵でしょ。私も前はそれに興味を持っていたんだけど、だんだんつらくなってくるんですよね。やはり日本人なんでしょうね」

花見さん「出来上がってないところがないと、本当にできてるといわないんですよ。ここ、まだ描いてないよとか、ここカンバス見えてるよとか…。そうすると、見ている人が絵に入りやすくなるんです。小説も、起承転結かっちりしすぎていると余韻がなくなってくるでしょう。この文学破綻してるんでないのという方が名作なんです」

日本には、未完成なものを美しいとする「未完の美」とか「余白の美」という文化がありますが、西洋美術の基礎を叩き込み海外で修行した花見さんにとって、いわゆる「良い加減」の揺らぎがある絵こそが、求める絵なのでしょうか。