夏の高校野球富山大会の注目校を紹介するシリーズ「球児の夏とやま2022」。4回目は脳性まひでありながら唯一3年生のキャプテンがチームを引っ張る富山西高校です。

整列:「気をつけ、礼」「よっしゃー、ランニング、よーし」

富山西高校野球部。キャプテンは3年生の高橋慎之介選手です。高橋選手は脳性まひで左半身を自在に動かすことができません。

富山西高校 高橋慎之介 主将:
「やっぱり、ほかの人よりも(足が)遅いので、集合を待たせてしまうことがあったんですけど、それ以外では大変だなと思うことはなかったです」「負けず嫌いなので、チームで一番足が遅い人がいたら、その人には負けないようについていったりとか…」

キャッチーボールをしていてもグローブをはめる左手が思うように動かないため、ボールを取るのもひと苦労です。ポジションはレフト。ボールを何度も後ろにそらしても、いつも全力です。

監督:「ほら、風を考えろ風」

富山西高校 稗苗雅寛 監督:
「最初はボールが投げられない。当たらない」「弱音とかは一切聞いたことはない」

監督:「27秒にしてやっちゃ。いけんかったらもう1本いくよ」

苦手だったベースランニング。高校1年生の時は、35秒もかかっていました。

監督:「やばーい、14秒」「24、25、26、27、28」「28秒90」
高橋選手:「もう1本」「よっしゃー、やったるぜ、もう1本」

クリアできず、もう1周。
監督:「24、25、26、27、28」「29秒22」

この日は5回挑戦してもクリアできませんでした。

♪野球を始めたのは中学1年生の時…

高橋慎之介 主将:
「友達がやってるのを見て、やりたいなと思ったのと、誘われて…。プロ野球とか見てて、かっこいいなと思って始めました」「中学の時に一緒にやってた人たちも高校でやっているので、負けず嫌いなので、どんなに嫌なことがあっても続けて、最後まで野球をやりたいなという思いはありました」

♪去年の夏 単独チームで出場。先輩たちが引退後、部員は高橋選手1人に…

監督:「バットが下がり気味に」「ボールの内側にバチンと」「そこの調整しないとこぼしちゃうから」

そして、ことし1年生3人が入部。夏は上市と連合チームでの出場を目指していました。それでも部員が9人そろわず、夏の大会出場が危うくなりました。しかし、稗苗監督はある方法を見つけました。

富山西高校 稗苗雅博 監督:
「すごく急ではあったんですけど、夏の大会に向けて力を貸してくれるということで。本当にありがとうございます」

高橋慎之介 主将:
「富山西高校の高橋慎之介です。ポジションはレフトです。よろしくお願いします」


富山北部高校 柿林信伍 選手:
「富山北部高校2年、ピッチャーの柿林信伍です。よろしくお願いします」

その方法とは、部員不足で連合チームが組めない学校が、他校から選手を5人借りて大会に参加する救済措置の「単独廃校ルール」です。

富山北部から選手5人が加わり、富山西のユニフォームを着て大会に出場できるようになりました。

高橋慎之介 選手:
「人を借りるということも先生が1から全部やってくれたので、稗苗先生がいなかったら夏の大会に出られるようになってないですし、感謝しきれないです」

助っ人としてきた富山北部の5人の選手は、ベンチ入りできずそれぞれが活躍の場を求めてやってきました。

富山北部2年 松井烈温人 選手:
「3年生が最後ということで大会に出られないのは、自分だったら嫌だったので、力になれたらと思って、参加しました」

3年間、部員が1人になっても一日も休まずに練習を続けてきた高橋選手。公式戦で初めてのヒット、初めてのアウトをとって、初勝利を目指します。

富山西高校 稗苗雅寛 監督:
「彼がキャプテンとして臨む最後の大会になりますので、とにかく最後のアウトまで全力で取り組んでほしいと思っています」

高橋慎之介 主将:
「まずは1勝したいです。1勝して、チームのメンバーと喜び合いたいです」

大会に出場できる喜びをかみしめて。高橋選手は最後の夏に挑みます。

(「N6」7月7日放送)