DeNA・三浦大輔監督が右手をあげると、度会隆輝(ENEOS、21)は大きくうなずき、涙を流した。26日に行われたプロ野球ドラフト会議で、ロッテ、中日、DeNAの3球団から1位指名を受け、抽選でDeNAが交渉権を確定。横浜高校時代に経験した指名漏れから3年、プロへの思いを誰よりも強く持ち、この日に臨んだ度会の夢が、ついに叶った瞬間だった。指名後の会見では「上手くしゃべれないんですけど、本当に今、とても幸せです」と語り、喜びを噛みしめた。
誰もが虜になる人間性
1年でも早いプロ入りを目指し、高校卒業後は大学野球ではなく社会人野球へ。183cm、83kgとバランスの良い体に、長い手足。昨年の都市対抗野球では5試合で4本のホームランを放ち、一躍ドラフト1位候補として名を挙げた。さらに遠投は100m、50mは6秒0と三拍子揃った外野手だ。
父はヤクルトで15年間活躍した度会博文さん。「憧れの存在で、越えなければならない。超えるのが一番の親孝行」と話す21歳には、関わった人間を誰でも虜にしてしまう”カリスマ性”がある。
取材を通して一番驚いたのは、度会の圧倒的な明るさ。初対面のスタッフでもカメラマンでもお構いなしに、自ら笑顔でコミュニケーションをとる。取材が終われば取材陣が口をそろえて「本当に楽しい取材だった!」と言うほど。関わった人を一瞬で自分のファンにしてしまうスター性が、度会選手にはあるのだと思う。
その類まれなスター性は、社会人野球の強豪ENEOS野球部の中でもひときわ光る。昼食の時間の食堂にお邪魔させてもらうと、度会のいるテーブルが圧倒的に賑やかだ。ある程度広さのある食堂でも一瞬でどこのテーブルにいるのかわかる。
「喋るのが大好きで!」と笑顔で話す度会の周りには、チームメイトであるかどうかに関わらず、いつも自然に人の和が出来ている。
プロに指名されたら「度会ロスに・・・」
横浜市にある根岸製油所は度会選手が月に2回ほど出社をする職場だ。30人以上が働くオフィスの壁には度会選手のユニフォームが飾られている。「ここまでずば抜けて明るい子は初めて。応援してあげたくなりますね」。そう話すのは、普段、度会選手の隣の席に座る職場の大先輩、工藤さん。ドラフト指名の瞬間は職場全体でその瞬間を待つと言っていた。
指名されればもちろん嬉しいが「寂しさはあります。度会ロスになるでしょうね」。目を細めながら話す大先輩の表情からも度会の人間性が伝わってきた。
■度会隆輝(わたらい・りゅうき)
2002年10月4日生まれ 千葉・船橋市出身 183cm・83kg 外野手 右投/左打
横浜高~ENEOS。父は元ヤクルトの度会博文さん。横浜高校時代は二塁手。2022年の都市対抗野球は5試合で4本塁打、11打点、打率.429をマークし、9年ぶりの優勝に貢献。橋戸賞(MVP)・若獅子賞・打撃賞の3冠に輝いた。2022年は公式戦打率.304、打点31、本塁打8で年間最多本塁打、最多打点。今季の公式戦は打率.323(10月22日現在)。