26日に行われるプロ野球ドラフト会議。野手の注目選手では、東京六大学の打点王・上田希由翔(22、明治大学)や超高校級捕手・堀柊那(18、報徳学園)といった逸材が名を連ねる。その中で上位指名の最有力候補と目されるのが、ENEOSの度会隆輝(21)だ。
度会の父はヤクルト一筋15年、チームに欠かせない名バイプレーヤーとして活躍した博文(51)さん。晴れ舞台で輝く父の背中を追いかけてきた度会の武器は、バッティングセンス。2022年の都市対抗野球では、打率.429の打率4割超をマークし、さらに5試合4本塁打と長打力も併せ持つ。2022年の社会人MVPにも選ばれ、ドラフト1位候補に名乗りをあげた。
「頭が真っ白になった」3年前のドラフト会議
原動力は3年前に味わった悔しさにある。当時高校3年生だった度会は、神奈川県強豪校の横浜高校で好打者として、すでに高く評価されていた。2020年のドラフト会議に向けて、プロ志望届を提出し、10月26日に運命の一日を迎えた。しかし、父・博文さん、母・祥子さん、兄・基輝さんが見守る中、「度会隆輝」の名前は呼ばれることはなかった。
当時のことについて度会は「頭が真っ白になったというか時間が止まったというか。とても悔しい思いをしましたし、呼ばれなかった時の時間ってものすごく長く感じました」と振り返る。
父・博文さんからはすぐに「お前なら大丈夫だから切り替えて、また絶対社会人で頑張ってプロに行けるから、お前ならできるから頑張れ」と言われたという。この言葉に救われ、ドラフト翌日から素振りを開始。高校卒業後は大学ではなく社会人野球へ進んだ。
その理由を度会は「1年でも早くプロに行きたいという思いがあって、大学だったら4年かかってしまうものが、社会人だと高卒は3年でプロにいけるチャンスがあるのでENEOSさんを選ばせていただきました」と話した。
実家のバッティングゲージは母手作り
度会の夢をそばで支えてくれたのが、母・祥子(さちこ)さんだ。千葉の実家に15年前からあるバッティングゲージは、祥子さんの手作り。ネットやYouTubeで作り方を日々研究し、単管パイプや補強のつなぎなどを、2トントラックを自ら運転しホームセンターに買いに行ったという。父とは異なる左打ちの息子のために、1か月で専用ゲージを仕上げた。
母・祥子さんが「自分自身の元気とかというよりは本当に子供たちのやる気と楽しんでくれるその環境が私を奮い立たせてくれるっていうか動かしてくれるっていう感じですよね」と語ったように、バッティング練習のトス役もこなし、度会と共に日々練習に明け暮れ支え続けた。
度会は母・祥子さんについて「パワフルというか、父親が忙しかった分、母親が全部補ってくれていたので、尊敬です」と話す。「今回は必ず、必ずプロに行きたいという思い。僕がプロ野球選手になってその時に初めて恩返しができると思うので、『選ばれたよ』って今回は言いたいですね」と熱い思いを語った。
父・博文さんの背中を追い、母・祥子さんが背中を押してくれた。今度こそ最高の親孝行へ、再び運命の一日を迎える。
■度会隆輝(わたらい・りゅうき)
2002年10月4日生まれ 千葉県出身 183センチ/83キロ 外野手 右投/左打
横浜高~ENEOS。父は元ヤクルトの度会博文さん。2022年の都市対抗野球は5試合で4本塁打・11打点・打率.429をマークし、9年ぶりの優勝に貢献。橋戸賞(MVP)・若獅子賞・打撃賞の3冠に輝いた。














