国際社会の中で日本は言うまでもなく“西側”だ。ウクライナ戦争ではウクライナ側に立った報道が中心になり、今回のイスラエルでの戦争状態に関しても“ハマスによるテロ”“イスラエルの報復”“ハマスが100人以上を人質に”…こうした報道が先立つ。
しかし、中東で生まれ中東を取材し続けたジャーナリスト・重信メイ氏は言う…
「学校にいじめる子がいて、常に常に毎日いじめられていじめられていじめられた子が、やっと初めてやり返したら、そこに焦点が当たったような感じ」
そこで番組ではパレスチナ側、特にハマスが実効支配するガザ地区の実情に目を向けた。

「ガザ住民の完全な停電と完全な飢餓状態」

ガザ地区は、イスラエルの南西部。西に地中海、南はエジプトに接する約360㎢の地域。福岡市とほぼ同じくらいの面積はフェンスに囲まれ、約230万人が閉じ込められるように暮らしている。“天井の無い監獄”とも称される過酷な現状はいわゆる“西側”にはあまり伝えられることがなかった。

番組ではガザ地区で生まれ育ったジャーナリストに直接インタビューした。彼女によれば今回の攻撃を世界は“奇襲”というが、パレスチナ人特にガザに住む人にとっては驚きではなかったという。なぜならイスラエルは今年に入って230人以上のパレスチナ人を殺していたため、事態がエスカレートすることは誰もが予期していたという。

ジャーナリスト マハ・フセイニ氏
「もう4日連続でガザ地区の大半の地域を標的にしたイスラエルの絶え間ない爆撃を受けています。パレスチナ人のためのシェルターもなければ身を守るトンネルもありません。出来ることは比較的安全な地区の親戚や友人の家、あるいは国連の学校に避難することだけ。でも学校も狙われています。2日前イスラエルの戦闘機が”学校の下にトンネルがある”という口実でガザの女子小学校を攻撃しました。そこには220人以上が避難していました。つまりガザにもう安全な場所は無いということです」

イスラエル軍が避難指示を出すこともあるという。ところがそれが信用できなという。

ジャーナリスト マハ・フセイニ氏
「8日イスラエル軍はガザ地区北部の住民に対し町の中心部に避難するように促しました。ところが住民たちが中心部に移動した後、イスラエル軍はその中心部を空爆したのです。これはジェノサイド、虐殺です。(中略)5つ程の病院も空爆の標的にされ被害を受けています。5~6台の救急車が完全に破壊されました。南部の病院への攻撃では1~2人の医療関係者が死亡しました。イスラエルは過去数年間ガザ地区への医療機器の持ち込みを一切禁止してきました。ガザの病院では空爆前から必要不可欠な医薬品の44%が在庫ゼロだったと聞いています」

更にイスラエルは、ガザ地区への水道、電気、食料の供給をストップした。これには人道的問題として国連も非難しているが現在も止まったままだという。

ジャーナリスト マハ・フセイニ氏
「イスラエルが電力供給を停止して以来、私たちは主に発電機に頼ってきましたが、ガザの自治体から1日に3~4時間程度の電力供給も受けています。しかし自治体からの発表によると燃料不足のためこの3時間の電力供給は今後数日間は利用できないかもしれないとのことでした。今月9日イスラエル政府はガザを完全に包囲すると発表しました。つまりガザ住民の完全な停電と完全な飢餓状態です」

これらガザ地区の悲惨な事実に国際社会はもっと目を向けるべきだとフセイニ氏は訴える。彼女もまた16年間ガザ地区に閉じ込められたまま生きてきたパレスチナ人なのだ。

ジャーナリスト マハ・フセイニ氏
「パレスチナ人は“自分たちは国際社会に見放されてきた”、“国連や世界の国々はイスラエルの犯罪を許してきた”と感じてきました。イスラエルはこれ(世界が許してきたこと)が犯罪を継続し更にはパレスチナ人に対する犯罪をエスカレートさせる青信号だとわかっているのです」

フセイニ氏がもっと目を向けて欲しいというイスラエルによるパレスチナ人への”仕打ち”は重信氏も言う。

ジャーナリスト 重信メイ氏
「イスラエルがガザを封鎖したのはハマスが選挙に勝った2007年から。イスラエルもアメリカもこの選挙は認めないって言って封鎖した。それ以前からもその後も生活に一番必要な電気、水、石油、食料、医療品…それをイスラエルがコントロールする。更にお金も。外からの援助やNGOなんかからのお金もイスラエル経由でしか入ってこない。完全な“支配”なんです」