世界で評価される和紙職人・川原隆邦さん(富山県立山町)と富山市内の金属加工メーカーが設置した新部署の名前は「みらい工芸部」。世界で評価される和紙職人・川原隆邦さん(富山県立山町)を招いてこの取り組み、どんな活動をしているのか取材してきました。

富山市内の書店の中を彩った色とりどりの円形のオブジェ。作ったのは、産業機械の金属部品を製造している富山市の金属加工メーカー「シンコー」です。2023年2月、社内に「みらい工芸部」という新たな部門を設置。世代を超えて各部署から集まった13人が、月に2回、午前9時から2時間ほど、就業時間を使って活動しています。

シンコー・中川真太郎社長:
「普段の業務以外でこういう活動をすることで、人の役に立てる形までにつながれば良い」

広報部の社員:
「こうやって集まってコミュニケーションの場にもなっているので私は結構良いなと思う」
総務部の社員:
「モノづくりの会社ですが、私は総務部でモノづくりする機会があまりないので、やっぱり楽しいです」

シンコー・中川真太郎社長
「違う発想を持ってる方と一緒に活動することで、新しい会社の価値にもつながると思うし、普段仕事をする時の発想の転換につながれば良いな」

指揮をとっているのは、シンコーの社員ではなく和紙職人の川原隆邦さんです。川原さんは、富山県に伝わる越中和紙のひとつ・蛭谷(びるだん)和紙の伝統技術を受け継ぎ、今は富山県立山町の工房から、ガラスや木材など多彩な素材と和紙を組み合わせた斬新な作品を生み出し、世界で評価されています。

シンコーの「みらい工芸部」が生み出したのは、これまで培ってきた金属加工と川原さんの紙漉き。それぞれの技術を融合させたかつてないアート作品です。

作品が完成するまでに、みらい工芸部の社員たちは、川原さんの工房で紙漉きを体験。和紙の原料となるトロロアオイも工場の一角で育てました。今回の作品のテーマは「宇宙」。その名も「マ輪ル」。シンコーが手がけた円形のアルミフレームに川原さんの和紙を貼り付け独特の世界観を生み出します。
今回の展示のために作った「マ輪ル」は100個。大小さまざまな「マ輪ル」を書店のメインスペース全体に飾っていきます。作品の目玉は幅3メートル、重さ30キロ。「宇宙」をテーマとした今回の展示会のシンボルとなる「土星」です。

川原隆邦さん:
「これ農業用のバーミキュライトで。保水用の土がすごくキラキラしてきれいなので、これ入れて作ったら良いなと。明暗ついているように見えるし、輪っかの外側黒くなってるし」

展示初日に書店を訪れた人たちはー。

訪れた人:
「オレンジと黄色のグラデーションがかわいい」「宇宙みたい」

シンコー・中川真太郎社長:
「金属と和紙の学び合いであったり、そういうところを深めていくことでもっとステップアップした作品とか、共有できるようなものができるのではないかと思う」


川原隆邦さん:
「第1弾としては、こういう形でできたことはすごく満足ですけれども第2弾、第3弾、4弾とどんどん広まっていって大きな動きになるといいなと思う」