中国・杭州で行われているアジア大会(9月23日~10月8日)。陸上・男子400mハードルに児玉悠作(22、ノジマ)が出場し、予選3位と出遅れたもののタイムで救われ決勝進出を決めた。

予選を終えた児玉は「アップの時の状態からスピード感だったり前半の流れは良かったと思うんですけど、後半につなげる部分がうまくできなかったので、そこは反省点です」と決勝での挽回を誓った。

今年3月まで法政大学の陸上部で活動していた児玉。学生時代は全くの無名の選手だった。実は卒業後、社会人として陸上を続けるかさえも迷っていたという。そんな児玉の人生を大きく変えたのが家電量販店「ノジマ」との出会いだった。

ノジマの企業理念に惹かれ、陸上とは無関係の一般職として就職活動。見事、内定をもらった矢先、なんとノジマが新たに陸上部を発足することが決まったというのだ。その内容は、社会人として業務と陸上競技活動を両立できる環境を提供するとともに、選手としての活動費用を支援するもの。本人が会社に頼み込んだ結果、陸上部への入部が決定。児玉にとってはまさに運命の出会いだった。

入社後は家電量販店の販売員として火曜日から金曜日まで週4日、テレビやエアコンの販売担当として店頭に立ち、勤務後や休日をトレーニングに充てるハードなスケジュール。それでも本人は「お客様の様々な環境にあった家電をご提案して喜んで頂けるのもやりがいですし、『今度、テレビを見るよ』『陸上も頑張って』って言って頂けるのがとてもやりがいになっています」と笑顔だ。

「家電量販店の販売員」と「陸上選手」異色ともいえる二刀流の歩み。すると、すぐに結果が現れ始める。今年5月のセイコー・ゴールデングランプリで今季国内最高の48秒77で優勝。7月のアジア選手権では銀メダルを獲得、さらにはハンガリーで行われた世界陸上にも初出場するなど、大学時代は無名だった児玉が一躍、日本期待のホープにまで成長を遂げたのだ。

「お客様の方から『ポスターで見たよ』とか、『児玉って君だったのか』って言っていただいたりすることもあるのですごくうれしいです」

陸上を続ける道を与えてくれた会社と応援してくれるお客様のために、3日に行われる男子400mハードルの決勝で児玉悠作がアジアの頂点を目指す。