今免疫ケアをキーワードに、プラズマ乳酸菌入りの飲料の販売を伸ばしているのがキリンビバレッジだ。生産ラインに100億円を投じ、市場の拡大を目指す取り組みについて、吉村透留社長に聞いた。
ビールの敵、乳酸菌は健康の味方。生産ライン増設で増産体制

健康意識の高まりから、需要を大きく伸ばしている乳酸菌飲料。中でも今注目されているのが、免疫系をうたった商品だ。こうした商品に入っているプラズマ乳酸菌を開発したのが、キリンビバレッジだ。民間の調査会社によると、2023年6月、全国のドラッグストアでキリンビバレッジの乳酸菌飲料の売上高は、前年比3割近く増えた。
――そもそもプラズマ乳酸菌とはどういうものなのか。

キリンビバレッジ代表取締役社長 吉村透留氏:
世界初のキリンが発見した乳酸菌なのですが、大体2週間ぐらい摂取し続けていただけると健康な方の免疫機能の維持にいいということが科学的に我々も確認しています。
キリンは1980年代から免疫の研究を始めており、2010年、世界で初めて免疫の司令塔に働きかけるプラズマ乳酸菌を発見した。
――キリンが見つけ出した乳酸菌なのか。
キリンビバレッジ 吉村透留社長:
はい。元々、我々の祖業がビールで、ビールを製造するにあたっては乳酸菌はどちらかというと敵なのです。有害なものが多いのですが、その乳酸菌の研究もしている中で見つかってきたということ。40年ぐらい前に発酵とバイオの力、我々の強みを生かして医薬事業に参入したという歴史の中で、その中でもずっと免疫に関する研究を続けていたということで、今回の発見に繋がったと思っています。

キリンビバレッジの湘南工場は約100億円を投じて、プラズマ乳酸菌飲料のラインを増設し、2023年5月から本格稼働を始めている。プラズマ乳酸菌飲料の製造販売は前年比153%を目標としている。プラズマ乳酸菌入り飲料は、これまでは製造を外部に委託していたが、100mlのペットボトル飲料の販売が好調なことを受け、自社で製造できるようにした。湘南工場は24時間稼働で1日に約4万箱のプラズマ乳酸菌飲料の生産能力があるという。
――新しい商品も投入して大規模な投資もしている。足元の手応えは?
キリンビバレッジ 吉村透留社長:
おかげさまでプラズマ乳酸菌関連の飲料としても非常に好調です。23年6月までですが、プラズマ乳酸菌飲料全体で22年に比べて135%ぐらい、1.35倍ぐらいになってきています。大変好評をいただいております。
――免疫力を強調する商品は、冬の方が売れるのではないかと思うが、夏に仕掛けている理由は?
キリンビバレッジ 吉村透留社長:
免疫ということから言いますと、やはり冬のインフルエンザだとかが流行する時期がメインかなと思います。免疫は自己防衛の機能ですが、夏に寝にくいとか冷房で冷え過ぎるだとか、夏バテの原因になるようなところにも関連しているのではないかと思いますので、夏にも、もしくは夏こそちゃんと免疫ケアした方がいいのではないかと我々は考えています。

これまでキリンビールの福岡工場など数々の製造現場を経験してきた吉村社長は、毎週売り場に直接出向くことを決まりにしている。
キリンビバレッジ 吉村透留社長:
私は現場で何が起こっているかというのをとにかく見たい、確認したい。自分の目で現場と現物と現実を確認するということが、会社で我々がこれからいろいろなプランや戦略を立てるというところに何よりも生きると思います。
――最近、販売現場に行って一番感じていることは何か。
キリンビバレッジ 吉村透留社長:
我々の飲料の中で見ますと、同じような商品が同じような価格で売られているということが目につきますね。この中でいかに我々自身を差異化していくのかということが重要だなというのを毎回感じます。迷ったら、とにかく現場に行けというのが私が元々考えていることであります。