2013年7月28日、山口市や萩市など山口県北部を豪雨が襲いました。2人が死亡、1人が行方不明となり、1700棟以上の住宅が被害を受けました。
あれからちょうど10年。今、まちに被害の爪痕を感じさせるものはほとんどありません。しかし、被災した人たちには、当時の記憶が深く刻まれています。復興への歩みを懸命に進め、10年の時を経た今、何を思うのでしょうか。
萩市の須佐漁港では28日朝、花火大会の準備が進められていました。打ち上げ12時間前の午前8時すぎで、会場には場所取りのシートが並びます。今年は、新型コロナによる中止を経て4年ぶりの開催です。
阿武町から
「きょうは混んでると噂に聞いたので、気合い入れて良い席で見ようと思ってきました」

毎年7月28日に開かれる、須佐湾大花火大会の日は、須佐が1年でもっともにぎわう日です。湾内で打ち上げられる花火は距離の近さと迫力ある音が、地元の人の自慢になっています。ちょうど10年前のあの日も祭りの当日でした。
地元で燃料店を営み、まちづくりに関わる石田憲雄さんです。

須佐おもてなし協会 石田憲雄さん
「水害の時はもう、朝から降っていたので祭りの準備じゃなくて、消防団で出動していました」
その日のことをよく覚えています。
石田さん
「天気予報を見れば、夕方から上がるという感じだったけど、確かに、雨は上がったけど、町が大変なことになっていたんで祭りどころではなかったですね」

2013年7月28日、須佐では1時間に138.5ミリの猛烈な雨が降り、町の中心部は濁流にのまれました。浸水などの被害を受けた住宅は400棟を超えました。予定されていた花火大会も、中止されました。被災から10年がたち、被害の爪痕を見つけることは難しくなっています。

田村朋久記者
「こちらの須佐川の水が10年前、あふれました。復旧・改修工事はほぼ終わっているということで、こちらの龍背橋、去年の8月に利用が開始されました。氾濫の原因になったということで橋脚はない形に掛け替えられています」

河口に近い4つの橋は、流木などが水をせきとめて川があふれる原因となったため、橋脚がないものに掛け替えられました。おおむね10年程度を目標としていた川の拡幅、護岸のかさ上げはほとんど終了しました。しかし、影響は今も残っている。石田さんは、そう感じています。
石田さん
「水害からすぐ、高齢の方が息子さん、娘さんから呼びかけがあってこの地域を出られた方がけっこうおられましたので、激減というのは目に見えて分かります」
須佐地区の人口は10年前の2376人から1728人に減りました。高齢化率も旧須佐町全体で42パーセントから55.8パーセントに上がりました。大きな企業がない須佐地区。花火大会の費用は行政からの補助を受けていますが、多くは地元からの寄付金でまかなわれています。これまで、須佐地区に限っていた寄付金のお願いを今年から、弥富地区にまで広げました。物価高騰で、花火に必要な費用はコロナ前の1.7倍に。打ち上げる花火はこれまでの5000発から2000発に減らすことになりましたが、目標の300万円が集まりました。

石田さん
「もしかしたら今年で最後になるかもしれん、という声が出ていたので、大変心配していたけど、なんとか目標額が達成できて今年が終わりじゃなく、また来年以降もできると安心しています」
地域自慢の花火は28日夜、打ち上げられます。被災から10年。4年ぶりの花火大会が再び地域に元気を取り戻すきっかけに、と願っています。
石田さん
「この須佐というところは7月28日の花火大会は地域外の人もすごく楽しみにしているので、滞在人口、交流人口がこのまま増えて、地域の盛り上げになればいいのかなと思っています。この花火大会で、元気な須佐地域が始まればいいのかなと思っています」














