政府が掲げる資産所得倍増プラン。実際のところ、どうやってお金を増やすのか、投資のプロに聞いてみた。

時代の流れに着目。優良企業を長期間保有し資産を育てるのがバフェット流

――日経平均が好調です。一時3万3700円近く行くときもありました。

ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
思った以上に海外投資家の買いが続いて結局6月の第3週、6月16日までなんと12週連続で買い越しいたのです。これにはいくつか背景があって、例えば日銀が6月の決定会合で緩和継続姿勢を続けました。ちょうどあの時期は岸田総理が解散をちらつかせていたので、日銀も動きづらいわけです。今政策変更というわけにはいかないので現状維持になった。その結果、円安が進んだ。これが日本株の上昇をさらにサポートしたというのがあります。さらに、空売りしている投資家の買い戻し、踏み上げ相場と言いますが、これも一部入ったようです。

――海外投資家の動きは今後鈍りそうですか。

4月、5月から6月中旬ぐらいまでの一方的な買いというのは、いったん収まったのかなという感じはします。チャートで見ても上値が重くなってきているなという感じはします。

――とはいえ株高が続いています。その背景にあるのが、バフェット効果です。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
バフェット氏は「投資の神様」と呼ばれ、バフェット氏が買った銘柄、株式がバフェット銘柄と呼ばれています。

――バフェット氏の名言があります。
「第1ルールは損しないこと。第2ルールは第1ルールを忘れるな」
「我々が好む株式保有期間は『永遠』」
「今後10年間市場が閉鎖しても喜んで持ち続けられる企業だけを買いなさい」

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
第1、第2ルールは絶対に負けないぞという強い信念の表れだと思うのですが、具体的なことは何も言っていません。絶対に負けないためにどうすればいいかというのが、保有期間は永遠だということと、10年間市場が閉鎖してもというのは、仮に10年間売却できなくなったとしても大丈夫なような企業だけを買いなさいという意味だと思います。

日本では投資というと目先の株価予想を的中させて、一発当てて手っ取り早く儲けるのが投資だと思われがちですが、そういうやり方をするとやけどをしてしまうことが多いです。バフェット氏のように優良企業を長期間、何十年も保有して資産を増やす、資産を育てていくやり方の方が確率的にはうまくいきやすいのです。

――バフェット銘柄を詳しく見ていきましょう。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
バフェット氏が買ったところだと有名なのが日本の商社5社です。他にもアメリカの巨大IT企業、大手金融機関、それからイギリスのお酒メーカーも買っています。

一方、売却したところで言うと、台湾の半導体メーカーとか、中国の電気自動車メーカー、それからアメリカの会社も売るところは売っていて、エネルギーの会社とか大手の自動車メーカーも売りました。

――台湾の半導体メーカーや中国のEVメーカーはこれから企業として大きく成長していく見込みのある企業ですが、ここを売っている。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
バフェット氏の考え方は非常にシンプルです。半導体メーカーもEVメーカーも世界有数の会社で、今後の成長期待も高い成長余地も十分あるのだけれども、一方で、米中の対立が激化していてなかなか改善する見込みもない。さらに、台湾情勢もどうなるかわからない。政治の世界なのでバフェット氏は予測しきれないのだと思います。余計なリスクは取らずに、買った銘柄はもっと確度高く儲けやすそうだということを言っているのだと思います。例えばスマートフォンのようなITの技術は今後も拡大し続けることがほぼ間違いないですよね。

一方でエネルギー会社を売ったのは脱炭素の流れです。たとえその会社がいい会社でも、時代の流れとして厳しいというところに着目しているのだと思います。