福岡県久留米市では去年8月、豪雨によって住宅など2700棟が浸水したほか、広い範囲で冠水し多くの農作物に被害がでました。久留米市は去年まで4年連続で水害に見舞われていて、対策の強化が求められています。市の取り組みについて取材しました。

RKB小畠健太「去年、あたり一帯が浸水した梅満町です。こちらでは梅雨入りを前に、河川の護岸のかさ上げ工事が急ピッチで進められています」
梅雨入りを前に久留米市では、各所で様々な治水対策が進められています。市内には100を超える河川がありますが、場所によって管理者が国、県、市と分かれているため、治水対策を行う際は、緊密な連携が必要となります。

2018年に、1300棟あまりが浸水被害を受けた下弓削川周辺では、県と市が護岸のかさ上げを実施、筑後川との合流部分では国が排水ポンプを増設しました。ポンプの排水能力は、これまでの1.7倍に引き上げられ、今年の梅雨から稼働することになっています。

久留米市 牧之内洋一河川課長「それぞれの管理者が対策をしないと、流域として浸水被害が軽減されることはありませんので、協力して同じ目標に向かって整備するのが大事かなと思います」

福岡県は全国で唯一、5年連続で「大雨特別警報」が発表されています。県内の被害状況でみると、久留米市は2018年から4年連続で広い範囲が水に浸かり、多くの市民が苦しい思いをしています。

その原因となっているのが「内水氾濫」です。予想を超える記録的な大雨によって、雨水を河川に排水することができず、支流や用水路から水があふれる状況が続いています。

久留米市 森望副市長「いかに降った雨を川に流すのではなくて、それぞれの土地でできるだけ長い時間出さないようにしていくかということが、これだけ雨が大量に集中的に降る環境では、その方法が一番いいと思っています」

久留米市は降った雨を一時的に貯めることで、河川に流れ出るピークをずらし、被害を軽減するよう対策を実施しています。その一環として、久留米大学のグラウンドには25メートルプール50杯分の雨水を貯める貯留施設の整備を進めていて、来年度、完成する予定です。また、農家の協力のもと田んぼの排水溝を制限し、一時的に雨水を貯める「田んぼダム」も新たに始めます。ほかにも、今年度中に市内4か所で貯水場所の整備を進めるほか、市が管理する土地も貯水に活用する方針です。

久留米市 原口新五市長「梅雨が早まってくるという状況ですから、会議の方も治水計画のペースを少し上げなければならない」
久留米市は、部局を超えて組織したプロジェクト会議を開き、治水対策に迅速に取り組んでいます。しかし、すべての工事が今年度中に終わるわけではありません。久留米市は、治水対策とともに防災情報の発信にも力を入れています。早めの避難につなげてもらおうと、市の職員や消防団員が投稿した災害の写真などを、市民がスマホで確認できるシステムを来月から稼働させます。

久留米市 森望副市長「梅雨の前にできるところについては、終わらせていくという風にやっておりますが、大雨が降って浸水してしまうという時になれば、どういう避難が身を守ることに一番いいかということを考えていただいて、適切な判断をしていただきたいとお願いしたい」

今年も記録的な大雨に見舞われた場合、現在の対策でどこまで被害を食い止めることができるのかは不透明な部分も多く、市は住民らに災害への更なる備えを呼びかけています。