盛岡市で5日、市街地付近でクマが出没した場合に備えて自治体や警察、猟友会が参加しての実動訓練が行われました。

 雫石川にかかる太田橋付近に集まったのは、警察や猟友会、そして岩手県や盛岡市の担当者など合わせて25人です。


 市街地の近くでツキノワグマが出没した際、それぞれの担当者が連携しながらどのように対応するかを実際に確認する目的で県が主催しました。
 県は市街地付近でのクマ出没の増加を受け、去年から机上訓練を重ね対応マニュアルを改訂していて実働訓練は今回が初めてです。

(リポート)
「訓練が行われたのは雫石川にかかる太田橋付近の河川敷。土手を挟んで後ろには住宅街が広がっています。こういった地域での出没は現実に起きています」

 5月31日、北上川にかかる盛岡市の明治橋付近でクマが目撃されていてその後、北上川を泳いで渡ったり河川敷を走り去る様子が撮影されました。4日も盛岡市松園の住宅地でも成獣と見られるクマ1頭が目撃されるなど市街地付近でのクマの出没が相次いでいます。
 訓練ではクマが最初に見つかった橋よりも上流部で再び目撃されたという情報を受けて、関係者が集まって対応を協議しました。

(岩手県自然保護課 酒井淳 総括課長)
「保護と管理のバランスを取っていかなければならない獣種ということもありますし、猛獣ということもありますので。発見された場所がどこなのか確認した上で実際銃が打てる場所なのか、捕殺する前の段階として追い払いができないか、麻酔銃を使えないか、ワナを使って捕獲できないかを前段階として検討させていただいております」

 警察や自治体が情報共有しながら対応を検討した結果、半径200m以内にある住宅が10軒未満など一定の条件が揃ったことから猟銃によって駆除するという方針が決まりました。
 そしておもちゃの猟銃を持った猟友会の会員が、盾で防御した市職員を伴ってクマに接近。クマを捕殺したということで訓練を終えました。
 今回の訓練には秋田県の担当者が講師役で参加しました。秋田県鹿角市では2019年に住宅街に出没したクマの対応にあたっていた猟友会の会員ら3人がクマに襲われけがをしました。それ以降、市街地への出没に備えた実動訓練を重ねていて、岩手県は秋田県の対応を手本にしています。
 秋田県の担当者は警察、猟友会、自治体それぞれの情報共有をスムーズにするための方法などについて助言していました。


(秋田県自然保護課 近藤麻実さん)
「ハンターさんだけに任せるのではなくて、行政側がしっかりと気を付けるべき点を抑えて、注意点を把握しておくためにこういう訓練はあると思います」


 豊かな自然に恵まれた私たちの暮らしは市街地とクマの生息域が意外なほど近いということの裏返しです。いざという時に正しい判断を下すために県は今後も様々な状況を想定して訓練を重ねることにしています。