水素そのものを燃やす「水素エンジン」の可能性

あとは水素そのものを燃やす水素エンジンという使い方もできるんです。MIRAIは水素を電気に換えて走りますが、そうするのではなく、水素そのものを燃やしてしまう。この方法だとすごいエネルギーが得られるので、例えば、垂直に離着陸できるような飛行機も実現するかもしれません。

まだ研究段階ですが、水素を直接燃やして使う方法と、電気にして使うという、ハイブリッドのパターンも案として浮上しています。すなわち、垂直に上昇するときは水素をそのまま燃やして水素エンジンで、一方で水平に飛ぶときはそこまで力が要らないので、水素を電気に換えて、というような考えです。

水素は電気の貯金箱

私は、水素の一番の活用法を、再生可能エネルギーで作った電気を貯蔵しておくための電池の役割を果たすことだと考えています。太陽光では昼間しか発電できません。でも、人は夜になって照明をつけたりお風呂に入ったりして電気をたくさん使うので、需要と供給が逆転してしまっているんです。

この昼間余った電気をどうするか、ということが問題になっています。九州でも出力規制、つまり夏の晴れた日に太陽光の発電を一時止めるということが行われています。もったいないって思いませんか?

このもったいない、使われていない昼間の再生可能エネルギーで(水を電気分解し)水素を作っておく、というのが一つの案です。そして電力需要が高まってきた夜間に、水素を使って電気を作ることで、再生エネルギー由来の電気を、夜も供給する。すると効率よく循環できるわけです。

電気の一番の問題は「溜められない」ということ。大型のバッテリーを並べて電気を溜めておくのか、それとも水素のような違う物質に変えて、電気を保管しておくのか。いろんな案が今試されていますが、そのうち水素は8割という高いエネルギー効率で貯蓄できるので、実用化が有力視されています。

日本の水素技術を輸出すべし!

日本はこの水素分野で、いろいろと進んでいます。例えば日本は水素をオーストラリアから輸入していますが、水素は爆発する危険性が高く、運搬は難しいんです。それを、日本の川崎重工が造った運搬船で成功させていて、世界的な注目を集めています。アメリカで何度もニュースで見ました。

また北九州市では、製鉄所から排出されている水素を、パイプを通して街まで運び、街の水素ステーションから自動車に供給するという実証実験を行なっています。こうした例はまだ世界にはそれほどありません。しかもこの実証実験は、2018(平成30)年というかなり早いタイミングでした。

こうした今ある技術を輸出して、新たに日本の輸出産業に育てたいですね。アメリカや中国のように広い国土を持つ国は、太陽光や風力を中心にすればいいでしょうけど、ヨーロッパ諸国のように日本と似た地理的状況にある国を対象にして、効率的に再生エネルギーを溜めたり使えたりする水素技術、水素産業の輸出はこれから求められていくと思います。