5月5日、石川県能登地方で最大震度6強を観測した地震から12日。高齢化が進む珠洲市では、人が住まなくなった「空き家」による問題が今回の地震で浮き彫りになってきました。

1年以上誰も住んでいない状態の住宅を指す空き家(国土交通省による定義)。

応急危険度判定「危険」と貼られた空き家

2020年に珠州市が行った調査では、市内の住宅7,170戸のうち、空き家は1,490戸。約2割の住宅が空き家となっています。

珠洲市正院町で聞き込みをすると、「空き家が多いですね。人口が少ないし。若い人はみんな出て行っておらん。年寄りだけ。」「この家はお父さんが亡くなって今は誰も住んどらん。寂しいわ。特に馴染みのある人はね。まぁ、会話したりとかそういう懐かしい思い出があるからね。」と市民は口を揃えます。

背景にあるのは、高齢化と人口減少。空き家が増えることで、建物の老朽化が進み、災害時の危険性も高まるといいます。

珠洲市環境建設課 建築住宅係の新勇人係長は、「日頃から管理されていない空き家は例えばどうしても突発的な地震や豪雨、台風などの自然災害の際に、窓や瓦を適切に処置していないことが第三者への危害に加わる可能性がある。」と、危険性について話しました。

珠洲市環境建設課 建築住宅係 新勇人係長

「健全な空き家が健全でなくなる…」相次ぐ地震により浮き彫りになった問題

北野真啓記者「高齢化により空き家問題が深刻な珠州市。相次ぐ地震により、問題はさらに加速する懸念があります。」

市ではこれまで、適切な手入れのされている空き家を「空き家バンク」として貸し出す仲介など、老朽化を防ぐ取り組みを進めてきました。
しかし、地震により問題はさらに深刻化しています。

「地震による建物被害で今まで健全だった空き家が健全ではなくなったことは、住んでいる人にとっては危険である、住環境の安全確保がされていないということなので、今後その危険になった空き家については情報を収集して管理者への適切な指導や改善策を導いていければ。」(珠洲市環境建設課 建築住宅係 新勇人係長)

「誰が処理するんやろ、このがれき…」震度6強で“倒壊した空き家”の管理は

地震で被害があった空き家の処理も問題となっています。

記者が「このお宅、柱が傾いてしまっていますけど、誰かが立て直すんですかね?」と尋ねると、通りかかった女性は「息子は金沢に行ったし、旦那は死んでしまったし、今は空き家。誰が処理するんやろ、このがれき。直すにもすぐには直せないし…。」とコメント。

地震で柱が傾いた住宅


また別の男性は、「人がいないから壊れたら壊れたまま、ほったらかし。怖いですよ。」と話しました。

「管理されていない空き家については補助金を出して解体して市民のみなさんの環境衛生上、安全な環境を守るために推進している。罹災証明の結果によってはいろいろな法律が適用される。活用できる補助制度があると思うので、よりよい建築物の管理につとめていければ。」(珠洲市環境建設課 建築住宅係 新勇人係長)

市は様々な対策を講じていますが、空き家問題や、付随するがれきの処理の問題など、課題はさまざま、解決には時間がかかりそうです。

珠州市ではこれまで、空き家の活用と解体の2本の柱で、空き家がさらに増えないよう取り組みを進めてきました。

空き家の所有者には、今回の地震で自分の空き家がどういう状態になっているかを確認してほしいということです。
そのうえで、空き家バンクなど活用ができなくなったものについては、勇気を持って解体することも選択肢の1つとして考えて欲しいと話していました。