高知県室戸市吉良川町で長年受け継がれる伝統の祭りが3日、4年ぶりに行われました。子宝を願う女性たちが人形を取り合う争奪戦も繰り広げられ、会場は大いに盛り上がりました。
5月3日。すがすがしい五月晴れのもと、ひときわにぎわう境内。室戸市吉良川町で2年に一度行われている『御田祭(おんだまつり)』です。五穀豊穣や世の中の安泰を願い、およそ800年前から受け継がれている伝統の祭りで、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。新型コロナで4年ぶりの開催となりました。

祭りでは田植えから収穫までの一連の流れを舞で表現する田楽能が披露されます。役者たちは朝早くから、身を清めながらゆかりの地を練り歩きました。
(御田八幡宮 久保八太雄 宮司)
「昔からの言い伝えで、“練りおさめ”を済ませると、『雨が降ろうが火が降ろうが、御田祭を最後までやってしまわないかん』という言い伝えがあります。早速“練りおさめ”をしていただきたいと思います」
演目が始まりました。田を練り。

牛をつかって田を耕し。

田植えをします。

役者を務めるのは氏子たち。重い衣装を身にまとい、3時間舞い続けます…

演目も終盤。
「申し込みされた方、お上がりください」
宮司の久保さんが参加者を呼び出し始めました。
“子宝に恵まれる”という人形を取り合う女性たち。

祭りの中で最も盛り上がる演目・酒絞りです。『豊年を祝うための酒をしぼると神様の子どもが生まれ、その人形を奪い取ると子どもを授かる』という言い伝えがあるのです。
今年は、子どもを授かりたいと県内外から集まった8人の女性が参加しました。
過去には激しい奪い合いで舞台から落ちた人もいたといいます。泣きながら必死になる様子から、「奇祭」として知られています。
(人形を勝ち取った女性とその家族)
「まさか取れると思ってなかったので取れてよかったです!最近子どもが「2人目が欲しいと言うのでちょっと出てみようかなと」
「弟がほしい!(Q.可愛がってあげる?)うん!」
「立派な子を授かると思います!少子化が進んでいるので子どもがいっぱいいたほうがまちも元気になると思うので」

(訪れた人)
「参加しようかなという話もしてたんですけどちょっと恥ずかしかったので今年は(笑)(Q.2年後の祭りでは)それまでにもし子どもができていなかったら出ようかなと思います」
(御田八幡宮 久保八太雄 宮司)
「ぜひとも再来年の祭りで『子どもができました!』と報告してもらいたい。きょうも何人かお礼参りに来ている人もいて、まるまる太った赤ちゃんを抱いて。また祈願のお参りをしておきます」

季節は流れ、演目は秋の稲刈りへ。クライマックスが近づきます。面をつけた役者が現れると、舞台は荘厳な雰囲気に包まれました。


「また再来年の祭りで!」と締めくくった御田祭。

高齢化で、役者の後継者探しも苦労が絶えないと言いますが時代によって形を変え、伝統は確かに受け継がれています。
(訪れた人)
「昔からの重要文化財でね、ずっと子どもの時から見てましたけど。いいですねやっぱり、続けてほしいですね」
(長年役者を務めてきたOB)
「さびしい、コロナ禍前はもっとにぎやかに…けんど、一生懸命やってくれましたからね本当に感激しております。地域の文化だから、ずっと続けていってほしい。時代によって形は変われど」

(御田八幡宮 久保八太雄 宮司)
「きのうまで寝られませんでした、十分できるかどうか不安で…それに、(4年ぶりの開催で)みんな忘れてしもうてね。ほっとしています、演目がひとつも欠けずにできて。吉良川のまちの人も重要なものを感じてくれているし『続けていかないかん』という“使命”を持ってくれている。本来の根本的なものは変わらずに時代に沿ってずれたり変えたりしながら、後世に続けていく、つなげていきたい」

五穀豊穣。世の中の安泰。そして、“子宝”を願う一人ひとりの思いが、4年ぶりとなった伝統の祭りをつなぎました。