再審=裁判のやり直しが決まった「袴田事件」ですが、袴田巖さんを半世紀以上、犯人としてきたのが「5点の衣類」です。しかし、再審を決めた裁判所は、この衣類は「捜査機関によってねつ造された可能性が高い」とまで言及しました。「5点の衣類」とはなんだったのか?真相を取材しました。
袴田巖さんの無実を訴える支援者は4月18日、静岡地検に要請書を提出しました。要請書の中で「犯行着衣とされた衣類は発見経緯が不自然。地検と静岡県警が一体となって袴田さんを犯人に仕立て上げた」と訴えました。
今から57年前、旧清水市のみそ製造会社の一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巖さん。袴田さんを犯人としてきた最大の証拠が、事件発生から1年2ヵ月後に見つかった血の付いた衣類『5点の衣類』です。
発見当初から疑惑に満ちていました。検察はもともと血の付いたパジャマを押収し、袴田さんの「犯行着衣」と主張していました。袴田さんも取り調べ段階でそれに沿った自白をしています。
<取調官>
「どういう格好して行ったんだ?」
<袴田さん>
「寝てるパジャマをそのまま着て、そのまま下へ降りて」
しかし、「自白は強要された」として静岡地裁の初公判で袴田さんが一転、否認に転じます。裁判は迷走するかに見えましたが初公判から9か月後、事件現場のみそタンクの中からパジャマとは別の犯行着衣が見つかります。これが「5点の衣類」です。
SBSは発見した当時の従業員を取材していました。
<5点の衣類を発見した元従業員>
「みそがうまく出ないからおかしいと思ったら、南京袋に詰まったものが出てきた。青いパンツもスポーツシャツも見てるからね。見覚えのあるものが出てきた。犯人は袴田以外にはいないと思った」
従業員が「袴田さんが似たものを履いていた」と話す特徴的な色のパンツなどを裁判所は犯行着衣と認め、袴田さんに死刑判決を言い渡しました。
袴田さんが「5点の衣類」のうちのズボンを実際に履くと、小さくて太ももまでしか履けませんでした。しかし、みそに浸かったことでズボンが縮んだとして、袴田さんの無実の訴えは長年、退けられてきました。
半世紀以上、袴田さんを犯人とする“最大の証拠”であり続けた「5点の衣類」。
<3月13日 東京高裁>
「再審開始です!再審開始」
3月、東京高裁は「『5点の衣類』は犯行着衣ではない」として、袴田さんの裁判のやり直しを認めました。「『5点の衣類』についた血痕は1年以上みそに浸かっていたにしては赤すぎる」という弁護団の主張を支持。さらに東京高裁は「袴田さんの逮捕後に捜査機関が5点の衣類をねつ造し、みそタンクに入れた可能性がある」とまで言及しました。
本当にねつ造はあったのかー
撮影は許されませんでしたが、事件発生直後にみそタンクの捜索に関わった元捜査員は「ねつ造をするはずがない。5点の衣類が見つかる以前も捜査はし尽くした上で犯人の逮捕に至っている」と話しました。一方で、「(5点の)衣類の発見を聞いた時は驚いた。事件発生直後は長い棒でつつきながら、タンクの底に何かないか慎重に探した」と振り返りました。
袴田さんは40年前、田中薫弁護士に送った手紙の中で「5点の衣類は捜査機関によるねつ造」と訴えていました。
<手紙から抜粋された文章>
「本件、血染めのズボン等についての私に対するねつ造」「我々は今こそ権力犯罪を微塵に粉砕しなければならない」
なぜ、ねつ造の疑いが早くから指摘されながら半世紀も放置されてきたのか?4月15日、東京高裁で裁判長まで務めた木谷明さんはこう分析しました。
<元東京高裁裁判長 木谷明弁護士>
「袴田事件を審理した裁判官は巖さんが衣類をタンクに埋め込んだという検事の主張を皆、平然と認めてしまった。なぜでしょうか?捜査官がそんな大掛かりなねつ造をするはずがないという何の根拠もない確信を裁判官が抱いていたからだと思う」
“最大の証拠”から“最大の疑問”に変わった「5点の衣類」。袴田さんのやり直し裁判でも検察は再び、これを「袴田さんの犯行着衣」とするのでしょうか。
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