未来につなぐSDGs。廃ガラスを再利用した素材で雑貨を作っている企業が高知にあります。全国で唯一という廃ガラスから作った雑貨。目指すのは、ガラスがゴミではなく“資源”になることです。

須崎市に工場を構える「土佐通信」。設立は2004年、無線や照明などの船舶機器を扱い、船の安全を守っています。会社を率いるのは、濵崎宏和(はまさき・ひろかず)さんです。本社がある土佐市出身で海とともに過ごしてきました。

土佐通信 濵崎宏和さん


豊かな自然を守りたいと考えていた濵崎さんが、目をつけたのが、こちらの“軽石”。スーパーソルといいます。

人工の軽石 “スーパーソル”


(木岡真理奈アナウンサー)
「スーパーソルはどういうものなんですか」

(濵崎宏和さん)
「ガラス瓶、廃ガラス。一升瓶とかビール瓶とかワインボトルとか、ああいうビンを砕いて小麦粉くらいにして、それに発泡剤を入れて焼くと、人工の軽石ができます。すべてが廃ガラスでできています。持ってみてください」

(木岡真理奈アナウンサー)
「軽い、ガラスなんですね。ガラスからできたとは思えない見た目ですし、色もグレーになるんですね」

すべてが廃ガラスでできている


(濵崎宏和さん)
「ガラス瓶っていろんな色がありますよね。茶色とか白とか透明とか緑とか青とか。全部混ぜて作っているので、そのときに茶色が多いとか透明が多いとかで若干色が変わってくる」

家庭や店などから廃棄されるガラス瓶は、年間およそ94万トンと言われています。(リターナブルびん除く)しかしこれらのガラス瓶のリサイクル率は7割ほどにとどまっています。

ゴミになってしまうガラスを少しでも減らそうと、1998年、沖縄の企業が、砕いたガラスを軽石として再利用する技術を開発し、全国に広がりました。

(濵崎宏和さん)
「主に土木用途で使われる、うちでは畑に混ぜて土壌改良で使っているし水質浄化にも使われる」

スーパーソルは、多孔質=たくさんの穴が空いているため、透水性、保水性、通気性に優れています。

多孔質=穴が多く開いている


土壌改良のため土に混ぜると土の中の水分量の調節ができるほか微生物のすみかにもなるといいます。主成分は土にも含まれる二酸化ケイ素で、環境への負荷が少ないのも特徴です。

そんなスーパーソルを日常生活でも取り入れようと、土佐通信が作ったのが…こちらです。

スーパーソルを日常生活でも取り入れようと、土佐通信が作ったのが…こちら


コースターにアロマストーン、植物を植えるポット。どれもおしゃれで優しい色合いです。イタリア語でガラス、素焼きを表すヴェトロ、テラコッタを合わせて「Vericotta(ヴェリコット)」と名付けました。

「Vericotta(ヴェリコット)」


(木岡真理奈アナウンサー)
「農業とか土木で使われていたものをどうして雑貨に」

(濵崎宏和さん)
「どうしても小さい粉が出る。その粉を何とか使えないかなと」

土佐通信は、ゴミになるガラスを減らそうと様々な分野での活用を模索。まずはこの素材を広く知ってもらうために雑貨を作ることになりました。驚くべきはその性能です。

(濵崎宏和さん)
「性能見てみますか。コースターに水をかけます。一瞬で吸い込む。チューハイなら5杯くらいですかね。それ以上飲みたいとなったら電子レンジでチンをしていただいたらまた5杯いけます」

(木岡真理奈アナウンサー)
「高知県民には1人2枚くらいあったらいいですかね」

木岡アナも驚き…!


コースター1枚で25ミリリットルの水を吸うことができるといいます。

コースター1枚で約25mlを吸収


かわいらしいデザインは県内のデザイナーが手掛けました。鳴子、ゆず、ショウガと高知のイメージが描かれているんです。

鳴子、ゆず、ショウガと高知のイメージが描かれている


スーパーソルの機能はそのままに可愛らしく変身した雑貨の数々。SDGsの普及とともに県外の企業などからの注文も増えているといいます。しかし、雑貨の製作はあくまで“スタート地点”。目標は、廃ガラスがゴミではなく素材のひとつになることです。

雑貨の製作は“スタート地点”


(濵崎宏和さん)
「今は雑貨で多くの方に性能を見ていただく。そこから次に発展して、こういうものができないかなと、工業用途であるとか建材用途であるとか、いろんなものに発展させて、広くもっと多くのものを作っていけるようになったら。捨てたらごみだけど、それを資源として活用していくことが大事。それが根付いていけば“廃ガラス”という言葉がなくなって、原材料、資料、資材として捉えることができるかもしれない」

廃ガラスをゴミから素材に