いわゆる「袴田事件」で3月20日、再審=裁判のやり直しが確定し、無罪の公算が大きくなった袴田巖さん(87)。歴史的な判断ともいわれる再審開始決定の背景には、裁判長の“熱意”があったことが指摘されています。
3月24日も普段通り、日課のドライブに出かけた袴田巖さん。その生活は変わりませんが、袴田さんを取り巻く状況は大きく変わりました。
1966年、旧清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」。死刑が確定していた袴田さんは犯人ではない可能性が高いとして3月13日、57年の時を経て再審=裁判のやり直しが決まりました。
2022年12月に行われた袴田さんの弁護団の会見です。
<袴田事件弁護団 西嶋勝彦弁護士>
「結論は(2018年の)大島決定を取り消して『最高裁の宿題』に応えた開始決定になるだろうと思います。それ以外には考えられない」
この時から弁護団は「今回は再審開始に間違いない」と自信を見せていました。
その根拠の1つが「裁判長自らの視察」です。2022年11月、静岡地検を訪れたのは、東京高裁の大善文男裁判長ら。裁判長自ら重要な証拠をめぐる実験を静岡地検に出向き、視察しました。
今回の審理で最大の争点となった事件発生から1年2か月後に見つかった「5点の衣類」の血痕の赤み。1年以上、みそに漬けても、血痕が赤ければ検察が有利に、赤みが消えれば弁護側が有利になる構図でした。
検察は血のついた布をみそに漬ける実験を行いましたが、弁護団は「検察が血痕がより赤く見えるように白熱電球を使用して写真を撮っている」と指摘。大善裁判長をはじめとする東京高裁は決定の中で次のように弁護団を支持しました。
「白熱電球を照射して撮影した写真は、白色蛍光灯下で撮影した写真に比べて、撮影された被写体の赤みが増すとされている」
大善裁判長らは、検察が提出した写真は「自分たちが肉眼で見た状況を忠実に反映していない」と指摘し、弁護団の主張に軍配を上げたのです。
弁護団が自信を見せた2つ目の根拠が「裁判長と袴田さんとの面会」です。2022年12月、袴田さんが車に乗って向かったのは東京高裁。この日、袴田さんは大善裁判長ら裁判官と面会しました。1980年の死刑確定以降、袴田さんが担当の裁判官と顔を合わせるのは初めて。画期的な出来事でした。
<袴田巖さんの姉・ひで子さん>
「裁判長さんは『私は裁判官のなんとかです』と自己紹介をして『巖さん、巖さん』と声をかけていただいた」
<袴田事件弁護団 角替清美弁護士>
「袴田さんを見る裁判官たちの目はやさしかったと私は感じました」
再審開始決定の背景にあった裁判官の“熱意”と“現場主義”。一方で、ルールが曖昧といわれている再審をやるかどうかは「裁判官のやる気次第」という問題点も浮き彫りにしています。
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