大塚祥平(28、九電工)にとって収穫と課題の両方が見られたレースになった。大阪マラソン2023は世界陸上ブダペスト大会選考会を兼ね、2月26日、大阪府庁前をスタートし、大阪城公園内にフィニッシュする42.195kmのコースで行われた。
男子はハイレマリアム・キロス(26、エチオピア)が2時間06分01秒の大会新で優勝し、西山和弥(24、トヨタ自動車)が2時間06分45秒の初マラソン日本最高記録で日本人トップの6位に入った。前回MGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ、東京五輪代表3枠のうち2人が決定)4位の大塚は、2時間06分57秒と自己記録を更新して日本人3位の8位と健闘した。
だが、初マラソンの西山と池田耀平(24、Kao)に敗れたことで、“勝ちきれない”大塚の課題もはっきりした。
3レース連続で2時間6~8分台の安定度
大塚の安定した強さが発揮されたレースだった。32kmで日本人トップ争いから後退したが、40kmまでの向かい風だった5kmをペースアップして日本人3番手に上がった。
そして最後の2.195kmを6分31秒と、西山よりも速いタイムで上がって見せた。35kmまで同じ集団にいた川内優輝(35、あいおいニッセイ同和損害保険)が、自身のTwitterで大塚の走りを賞賛していたほどだった。
2時間6分台を出せた要因として、大塚自身は「後半の風が気になるほど強くなく、集団の中で力を貯められたから」とレース条件を挙げた。それに加えて大塚が、安定した力を付けていることが大きい。

表で示したように、ここ3レースは2時間7分台、8分台、そして今回の6分台でマラソンを走破している。日本人順位も2位、2位、3位と3位以内を確保してきた。19年MGCの4位は「そのときは出来過ぎの順位と思った」が、その実力を裏付ける走りを続けている。
安定した結果を残すことができるのは、自身の力を冷静に見極められるからだろう。
「大阪で2時間6分台は出るだろうと思って臨み、そこを出すことができたのはよかった」と振り返ったが、大会前に設定した目標タイムで走る選手はそれほど多くない。
2時間4分台、5分台の外国勢が出場することについても、「真っ向勝負は難しいかもしれませんが、持てる力を出して勝負していきたい」と話していた。根拠もなく勝負を挑むよりも、自身の力を出し切ることが結果的に勝つチャンスを大きくする。
前レースの21年福岡から1年3か月、マラソンを走らなかった。大塚自身、それ以前は年2本ペースだったし、大半のマラソン選手と比べても走らない期間が長かった。そこも冷静に判断してのことだ。
九電工の綾部健二総監督は以下のように説明する。
「(21年8月の)東京五輪は補欠選手としてぎりぎりまで出る準備をしていました。6~8月までオリンピックを走る緊張感を持って練習し、次の福岡まで9、10、11月と続けてマラソンの準備をした。身体的にも気持ち的にも、一度リフレッシュしないと厳しいと判断したのだと思います」
大塚はそこを直感的に判断したようだ。そしてその間の練習で、「2時間7分台を出したときより上のレベルの練習ができました。2時間6分台という目標記録が、(前々日会見で)自然と口に出たのだと思います」と綾部総監督。
自然体で自身の現状を把握し、その時点の最大のパフォーマンスを発揮する。大塚のその能力が今回の大阪マラソンでも出た結果の2時間6分台だった。