台湾統一を目指す中国が数年以内に武力行使に踏み切る可能性が指摘され、国内で抑止力強化の動きが加速し、沖縄では自衛隊配備の動きが着々と進められています。
「台湾有事」は本当に目に前に迫っているのかー

先月行われた、ミサイル攻撃から避難する国民保護訓練。

保育施設職員「みんなで『逃げろ〜』って、逃げるんだよ」
保育施設職員「そうそう、行こう行こう」
誘導係「慌てずにみんな避難してね」

ゆっくりとした避難行動ののち、市民がしゃがみ込んで頭を抱える姿が報道されました。

子ども「ミサイル、本当のミサイル?」
保育士「ミサイル、あれは訓練だから偽物のミサイル」
県民 「中国がいつ攻めてくるかという事もあるし、こういった訓練もいいんじゃないか」

那覇市 知念覚 市長「こういう訓練をやって、不安にならない方はいないと思います。『前とは少し雰囲気が違う』というのは正直あると思うんですね。本当に平時から有事に備えてこういうものを、啓発しておく(のが自治体の役割)」

しかしこうした “意識啓発” の危うさを指摘する専門家もいます。
上智大学で日本外交史や国際政治史などを研究する宮城大蔵教授です。

上智大学 宮城大蔵 教授
「あの訓練で本当に避けられるかというとあまり意味はないと言わざるを得ないと思うその一方で、有事って本当に来るんだなと思わせるところがある」

訓練が「有事は近い」という安全保障の危機を煽るのではないか。
また宮城教授はメディアがそれを促してしまうことへの懸念も指摘し、情報の受け取り手には冷静な判断を求めます。

宮城大蔵 教授「メディアでは、どうしてもより切迫してるとかより危ないという話の方が大きく伝えられるような傾向ってやっぱりあるように思う。それが積み重なっていくと、本当に数年以内に起きるのが必然であるから備えなくてはいけないという、非常に狭いところに世の中の空気が狭いとこに入り込んでいく。
その怖さがすごくある」

ウクライナの戦況や、中国の台湾統一をめぐる報道が日々飛び交い、軍事基地が集中する沖縄でも漠然とした不安が高まりますが、宮城教授は中国が台湾を武力統一を試みようとするかはウクライナとは別の問題、むしろ混迷するウクライナを見て中国の指導部は慎重になると考えています。

宮城大蔵 教授「ロシアがウクライナに侵攻し こんなに泥沼化してしまって プーチン政権の先行きも見えないような状況になっているわけで、同じことを中国が始めるというのが、どれくらい中国にとって成功する可能性があるのか。リスクがあるのは間違いないけれども『リスクがある』ということと『数年以内に起きる必然性がある』ということの間に䛿非常に大きな差がある。(事態が)切迫してるという意見の方にばかり一方的に引きずられるということにならないように心がけるということが大事」

先週の国会、衆議院予算委員会。同じような警鐘が鳴らされました。
かつて防衛大臣も務めた、自民党の石破茂議員と岸田総理との間で、こん
なやりとりがありました。

自民党 石破茂 衆議院議員
「中国の軍拡はとどまるところを知らない。しかしながら、今日のウクライナ
は明日の台湾、台湾有事は日本有事というような、そういうような思考とい
うものは、余り簡単にすべきものではないと私は認識しています」

岸田文雄 首相
「国連の安全保障理事国であるロシアが、ウクライナを侵略するということによって、国際秩序が問われている。そして今、東アジアにおいても急速なミサイル技術の進歩等において、不透明な状況が指摘されている。だからこそ、今、防衛力の強化について大きな議論になっていると認識をしています」

石破茂 議員「防衛力は節度をもって整備をされなければなりません」

安全保障環境の変化を国民に説明することが政府与党の責任だとも述べた石破議員に対し岸田総理はー
岸田文雄 首相「従来の伝統的な防衛力の強化の議論だけにとどまらず、外交安全保障、あるいは経済と、この『総合安全保障』と言われるような国全体のありようが問われる。こういった防衛力の強化の議論をしていかなければいけない」

宮城大蔵 教授「どの程度のもの(装備)が必要で、どういう外交ビジョンとセットになっているのか。そういうこととあわせて本来議論されるような大きな話なわけです。けれども『ウクライナがあったから次、台湾が危ないんだ』という、一種のキャンペーンめいた動きの中で、(抑止力強化が)正当化されてる危うさってのはある」

抑止力による対抗が破綻すれば、戦場となる不安を抱える沖縄。
「備え」以上に、有事を起こさない「対話」が今、求められています。