力が入らなくなったり手足がしびれたりするギランバレー症候群。この難病を克服した一人のランナーがフルマラソンに挑戦しました。
突然感じた「異変」肩が上がりにくい


3年ぶりの開催となった「北九州マラソン」。第10回の記念大会となった今回は、1万人を超えるランナーが参加しました。今大会は、新型コロナ対策として、ワクチン検査パッケージを導入。ボランティアや医療スタッフとして4500人以上が集まり、大会前には、AEDの扱い方などを学ぶ講習会が開かれるなど、安全に大会が運営できるよう準備してきました。ランナーの一人、大阪府の出身で、北九州市に単身赴任している医師の安井昌博さんです。力強く走る安井さんですが、かつて、ある病と闘っていました。
安井昌博さん「入院して3日目。呼吸できなくなって管を入れられた時の写真です。ギランバレー症候群ですね」
「ギランバレー症候群」は、末梢神経の障害によって、力が入らなくなったり手足がしびれたりする難病です。安井さんは10年前、大阪の病院に勤務していた頃、突然、体に異変を感じました。
安井昌博さん「肩が上がりにくいところから始まって、どんどん歩けなくなってなって、入院して、次の日には呼吸器を入れられてしまって」
闘病中は、様々な不安が頭をよぎったといいます。
安井昌博さん「そこまで重症の病気という認識はなかった。治るだろうなっていうのはあったんですけど。当時のことを振り返ると家族にはひょっとしたら『一生寝たきりかも』と」
懸命なリハビリの結果発症から約4か月後に職場に復帰することができました。その職場の同僚から誘われたのが、マラソンです。最初は、興味本位で参加した安井さんでしたが、10キロマラソンを完走したことで、フルマラソンへの参加を目指すようになったといいます。
おいしいビールを求めて?もうひとつの理由も

安井昌博さん「最初の10キロを走って、その後のビールがめちゃくちゃうまかった。フルマラソンやったらもっとおいしいと思って、そしたらおいしかった。本当においしいんですって、本当に」
おいしいビールを求めて。これまで、全国各地のフルマラソンを9回完走してきました。練習するのは、主に病院での仕事を終えた後で、公園の外周を走るのが日課です。安井さんは北九州市の産業医科大学の出身で、病気になって10年、そして10回目の節目のフルマラソンを、かつて青春時代を過ごした北九州で迎えます。
安井昌博さん「4時間切りたいと言ってたんですが、4時間半も厳しいかなっていうところなんで、5時間切るくらいの感じで頑張りたい」
当日大会前には、「おいしいビールのために走る」と話していた安井さんですが、照れくさそうにもうひとつの理由も教えてくれました。
安井昌博さん「病気してますので、病気して走れるっていう・・・。毎回どのマラソンでもそうなんですけど、スタートラインに立ったら泣いてるんですよ」「しんどいけれどもここまでできますよというのを、闘病してる方に見せられたらいいかなーと。誰も見てくれないんですけど」
フルマラソンで4時間半切り


そして・・・。号砲が鳴り、徐々にスピードを上げる安井さん。スタートから快調なペースで走ります。降りしきる雨にも負けません。
安井昌博さん「スピードをちょっと落とそうと思うけど体が落ちない」
門司区に設けられた折り返し地点付近でも、スピードが落ちません。いよいよラストスパートです。最後の直線を力を振り絞って走り抜き、タイムは4時間24分52秒。目標としていた、5時間を大きく下回りました。
安井昌博さん「4時間半きった、嬉しい!こんな僕でもここまで頑張れるから、絶対皆さん頑張れると思いますので諦めずに頑張って下さい。こりゃビールがうまいぞ!」














