沖縄県北谷町に去年11月、バスを改装したあるお店がオープンしました。
この店舗に店主が込めた思いを取材しました。

北谷町砂辺。ここにレトロでかわいい1台バスが留まっています。車内に並ぶのは数々の本。ここは、バスを改装して去年11月にオープンした、古書店なんです。11
店主 畠中沙幸さん「自分がいくらだったら買うかなとか。いくらだったらうれしいかなっていうのをちょっと想像しながら、想像を膨らませながら値付けをしていきます」
店主の畠中沙幸(はたなか さゆき)さん。北谷町出身の畠中さんは東京で会社員として働いていましたが、出産を機に故郷に戻ってきました。地元で気軽に本にふれられる場所をつくりたいと、バスを改装した古書店をつくろうと考えたといいます。

畠中さん「本の敷居を低くできたらいいなと思って、普通の本屋さんだと本が好きな方がやっぱりたくさん来ると思うんですけど、バスとかだと本自体にそこまで興味がなくても、入り口としてスクールバスに乗ってみたいっていうので来るって言うのかな」
店の名前”ブックパーラー砂辺書架(しなびぬしょか)″には、県民が気軽に立ち寄るパーラーのように、自由に本を楽しめる空間にしていきたいという思いが込めています。
バスはSNSを通して、アメリカのカリフォルニアで教会への送迎に活用されていたものを購入し、本棚の高さやイスの配置になど、設計図も畠中さん自らが作製しました。

利用者「普通のバスをここまで改造して、面白い空間にできるのがすごいなって思いました」
本には新たな出会いと発見が詰まっているという畠中さん。そんな本と一冊でも多く出会ってほしいという思いを胸に店を切り盛りしていますが、実は店にはもう一つ秘められた思いがありました。
畠中さん「飛行機(軍用機)とかが飛んで『あ、こんなにうるさいんだ』とか、こんなに間近に飛んでるんだって言うのが、なんか体感できるのかもしれないっていうことで少しでも沖縄の現状とかに目を向けるきっかけになるといいなっていうような」
基地が程近い場所にあり、軍用機の音が鳴り響くのはいわば、砂辺の日常にある風景です。この音を聞いて、沖縄のことを考えている人がいると嬉しいと話す畠中さん。一見変哲のない、店内の本の並びにも、実はこだわりがあるそうでー

畠中さん「徐々に見ていくと、いつの間にか沖縄の絵本だみたいな。今までは興味がなかったけれどちょっと見てみようかな、みたいな。手に取ってみようかな、で開いてみたら『こういう話だったんだ』というような発見があると思うので、そういうのを意図して並べています」
畠中さんは今後も、地元である砂辺で営業を続けたいと考えています。
畠中さん「一人でもここに来るとほっとするとか、あそこでちょっとのんびりしたいとか、そういう風に思ってもらえるような。その誰かの居場所になっていけたら」
老若男女問わず、思い思いの時間を過ごせる居場所となれるようにー黄色いバスはきょうも北谷町の住宅街のなかに留まっています。