原爆の悲惨さを伝える展示を子どもたちにどう見せるのか。広島の原爆資料館で、検討が続けられています。
広島市の原爆資料館です。近年、外国人観光客が増加し、昨年度の来館者数は過去最多を記録しました。
一方で、修学旅行などで訪れる子どもたちが十分に見学できない課題に直面しています。
広島平和文化センター 谷史郎 副理事長
「平和学習の展示を充実させたい」
そこで新たに、修学旅行生などを対象とする子ども向けの展示を館内に設けることが決まり、検討が始まりました。自分事として考えられるようにと、子どもたちと同世代の原爆で犠牲となった生徒の遺品や日記を中心に展示します。
そのなかで議論を呼んでいるのが、「悲惨な展示を子どもたちにどう見せるか」です。
原爆投下直後の傷ついた人たちの悲惨な写真などが展示されるエリアを壁で仕切って、入り口に注意書きの看板を設置。子どもたち自身に見るか見ないかを「選択」してもらう案が出されたのです。
この議論の背景には、子どもたちへの心理的配慮があります。
広島大学 上手由香 准教授
「原爆の凄惨な絵や写真、そのインパクトだけが残ってしまう」
臨床心理学が専門の広島大学の上手由香准教授です。
検討会の委員でもある上手准教授は、来館した小学生を追跡調査。すると、1か月程度経っても、▼就寝前に思い出す、▼夢に展示が出てくるといった児童が複数いることがわかりました。
広島大学 上手由香 准教授
「悪夢を見るなど、文脈・意味関係なく、繰り返し出てくることがある」
上手准教授は、子どもたちに「怖い」という感情だけが植え付けられ、原爆や平和について学ぼうとする意欲が低下するのではないかと懸念を示します。
広島大学 上手由香 准教授
「怖かったら、いったん“見ない”選択も権利として守られている。それだけでも安心感が出てくる」
一方で、選択展示に慎重な意見を持つ委員も…
被爆者 内藤愼吾さん
「悲惨な資料をぜひ見てもらいたい。そのうえで、核兵器の廃絶や平和をみんなで語ってもらいたい」
検討委員で唯一の被爆者・内藤愼吾さんです。6歳のとき、爆心地から1.7キロで被爆。家族全員を原爆に奪われました。
被爆者 内藤愼吾さん
「若い人に心理的な影響があり、かわいそうだからと、『見なくてもいい』との表示は絶対してはいけないと思う」
凄惨な状況をその身で体験したからこそ、「目をそらしてほしくない」と話します。悲惨な展示を見ることで、原爆の本当の恐ろしさを知ることができると考えています。
「被爆の実相を見てほしい」という願いと、「トラウマを植え付けない」配慮。
6月の検討会では、「不安を感じる人は、先生やボランティアスタッフに相談してみましょう」と、子どもたちの心に寄り添いつつも、見ることが前提の注意書きを掲示することが提案されました。
被爆者 内藤愼吾さん
「『他の展示物を見て済ませなさい』という表示は賛成ではなかったが、私はこの表現ならいいと思う」
次の世代に被爆の実相をどう伝えていくのか。模索が続いています。
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